元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「西湖畔に生きる」

2024-11-08 06:21:57 | 映画の感想(さ行)
 (原題:草木人間 DWELLING BY THE WEST LAKE)監督のグー・シャオガンが前に撮った「春江水暖 しゅんこうすいだん」(2019年)に比べれば、少しはマシな出来映え。ならば面白いのかというと、そうではない。ハッキリ言って、この映画が前作に対して優れている点というのは、尺が短いことだけなのだ(「春江水暖」は150分だったが、本作は115分)。その分、時間の節約にはなる。

 浙江省杭州市の近郊にある西湖のほとりは、高級茶の龍井茶の生産地である。そこで茶摘みの仕事をしていたタイホアは、女手一つで息子のムーリエンを育て上げた。彼女は茶畑の主人チェンと懇意になるが、チェンの母と仲違いをして茶畑を追い出されてしまう。やがてタイホアは、友人の誘いでマルチ商法に手を染める。ムーリエンはそんな母を救おうとするが、上手くいかない。そして彼は思い切った行動に出る。

 冒頭、山肌に広がる茶畑を空撮でとらえた映像は素晴らしく美しいが、ここだけ観て退場してもあまり後悔はしないと思われる。なぜなら、その後のストーリーが要領を得ないものだからだ。タイホアが違法なビジネスにのめり込んだ理由は明示されておらず、そんな母を慕っているはずのムーリエンの言動は整合性を欠いている。どうでもいい話が延々と進んだ挙げ句、終盤の展開は意味不明だ。

 グー・シャオガンの演出は冗長で、タイトにまとめればたぶん1時間で終わる話をスピリチュアルっぽい画像を並べ立てることによって引き延ばしている。ムーリエンに分するウー・レイとタイホア役のジアン・チンチンは演技も見た目も申し分ないとは思うが、映画の内容がこの程度なので“ご苦労さん”としか言いようがない。なお、グオ・ダーミンによる撮影と梅林茂の音楽は及第点には達していた。

 余談だが、中国でもマルチ商法は蔓延っているらしい。被害総額は日本ほどではないが、件数は相当なものとか。引っ掛かるのは主に高年齢層だが、若者も無関係ではない。もちろん当局側は積極的に摘発・検挙に取り組んでいるものの、撲滅させるほどの成果は上がっていないのが現状だろう。この映画でもそのあたりを突っ込んで描いていれば、見応えのある作品に仕上がったのかもしれない。

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