猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

パパの木

2013-08-06 02:28:50 | 日記
フランス・オーストラリア合作「パパの木」を見にいった。
オーストラリアの大自然の中で、ドーン(シャルロット・ゲンズブール)とピーターは、4人の
子供たちと共に幸せに暮らしていた。
ところがある日、ピーターが仕事からの帰り、運転中に心臓発作を起こして死んでしまう。
車は家のそばにある大木にぶつかって止まった。
ドーンはショックで寝込んでしまい、子供たちの世話も満足に出来ない。高校生の長男ティム
が頼りである。
8歳の長女シモーンは、父の死を受け入れられず、父が死んだ時にぶつかった庭の大木に父の
魂が宿っていると思い込み、木に登って話をするようになる。
そしてなかなか立ち直れないドーンに、「木にパパがいるのよ」と話し、それを2人だけの秘密に
した。最初は信じなかったドーンも、次第に木に夫がいるような気がしてきて、シモーンの
ように木に登って語りかけるのだった。
ピーターが死んで8カ月経った頃、ドーンは町に出て仕事を探す。仕事はすぐに見つかり、その
雇い主のジョージと親密になり、明るさを取り戻していく。
しかしシモーンはドーンとピーターが仲良くするのが気に入らない。ティムは「ママの問題だ」
とシモーンを諭すが、シモーンには受け入れられないことだった。
ある日庭の大木の、太い枝が折れて、ドーンの寝室を壊してしまう。

うーん、あまりおもしろくなかった。父親を突然亡くした家族の再生の物語で、テーマはいい
と思うのだが。
シャルロットと、シモーン役の少女の演技はとても良かったと思う。2人とも、変わりゆく
繊細な心の動きを、よく表現していたと思う。
だが私は、このドーンとシモーンにちっとも共感出来なかった。シモーンは子供のくせに
あざといと言うか、全くかわいいと思えない。見ていてイライラした。
そしてドーンも、少し変わった家庭に育っているのだが、ずっと父親に依存し、それがいやに
なると知り合ったピーターに依存するようになり、ピーターを失ってからは何も出来ず、やっと
仕事に出る決意をしたと思ったら、今度は雇い主のジョージに依存するようになる。
ずっと人に頼ってばかりの人生なのだ。高校生の長男の方が余程しっかりしていて、父親の
代わりになろうとしている。
それに理解しがたいのが、庭の木を切らなくてはならなくなり、それに反対するシモーンが
頑固に木から降りてこないシーン。ドーンはジョージの他に作業員を数人頼んでおきながら、
最初はシモーンに降りてくるように言うが、ジョージがシモーンを説得にかかると、いきなり
「ジョージ、もういいわ。充分よ」と説得をやめさせてしまう。
そしてジョージに「もう来ないで」「消えて」などと言う。ジョージは「8歳の子供のわがままを
聞くな」と言うが、結局ドーンは、変な言い方だが、ジョージよりシモーンを選ぶのだ。
選ぶという言い方は適切ではないかもしれないが、シモーンに手を焼いていたのに、結局は
シモーンがかわいそうになり、わがままを許してしまうのだ。
このシーンがすごく不快だった。冒頭でピーターが死ぬ前のシーンでも思ったが、この夫婦は
子供を甘やかし過ぎだと思った。シモーンだけでなく他の子供に対してもだが。
ジョージの言い分の方が正しいと思う。甘やかすな、と。
そして恋人であるジョージに「もう来ないで」って…ひど過ぎるのではないか。
私はわがままな子供が嫌いなので(大人もだけど)、ドーンの行動には共感出来なかった。
まあそれでも一応ハッピーエンドっぽい終わり方をするのだが、ちょっとこの映画はあまり
好きになれない。シャルロット出演の映画の中でも、かなり好きではない。

あと、シャルロットにはなるべくフランス映画に出て欲しい。ずっと英語の映画が続いていて、
フランス語の映画に出たのはもう何年も前ではないだろうか。淋しい。