猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

黄金を抱いて翔べ

2013-08-12 03:58:57 | 日記
「黄金を抱いて翔べ」。高村薫氏の小説の映画化。
幸田(妻夫木聡)は、犯罪者相手に調達屋をしている29歳。20数年ぶりに戻ってきた大阪で、
同じ大学だった北川(浅野忠信)に会う。そして、大手銀行本店の地下にある240億円相当の
金塊を強奪する計画を持ちかけた。
初めは気乗りしなかった幸田だが、いつの間にか計画に加わる。他に、銀行担当のシステム
エンジニアの野田(桐谷健太)、爆弾に精通している元北朝鮮の工作員モモ(東方神起チャンミン)、
元エレベーター技師で銀行の内部に詳しい”じいちゃん”こと斉藤(西田敏行)、計画を知って
しまった北川の弟の春樹(溝端淳平)と、6人の仲間が集まった。
6人は金塊強奪の計画を練り始めた。

あらすじを書くのが難しいので、この辺りまでにしておく。私はなかなかおもしろかったの
だが、ネットでレビューを読むととても評価が低く、散々に書かれている。そんなに良くない
かなあ、この映画。
私は原作を読んでいないので、「原作と違う」とか「原作の良さをダメにしている」といった
感想はない。高村氏の小説は長いので、よく2時間ちょっとにまとめたなあと感心してしまう
くらいだ。
金塊の強奪といってもこの物語はサスペンスではない。主要人物6人の人生や人間関係が繊細に
描かれた、人間ドラマである。特に幸田、モモ、じいちゃんのエピソードは暗く悲しい。
でも後半の、銀行に侵入してからの運びは、ハラハラしておもしろかった。それに単純に、
命をかけてまで強盗なんてやるもんじゃないよ、と思った。北川がリーダーとなって計画を持ち
かけなければ、幸田も、モモも、北川自身も、違った人生があっただろうに。
私はチャンミンという人を知らなかったが、この人がなかなか良かった。チャンミンだけで
なく、俳優の演技は皆とても良かった。

ただ、わからない点もいくつかあった。まず主人公の幸田は「人のいない土地を探している」の
だが、生育環境に問題があったとはいえ、大学まで行っているのに、どうしてそんなに心が
すさみ、調達屋なんかをやっているのか。幸田はいつも暗く、感情をあまり表さない。
次に、幸田とモモは以前出会っているのだが、「モモが幸田をじっと見ていた」のは何故なのか。
次に、北川は仲間うちで唯一の既婚者なのだが、大事な妻と幼い息子がいながら、どうして
金塊の強奪などという大胆な犯罪に走ったのか。しかもリーダー的存在である。
金が欲しかったから、と言われればそれまでだが、北川はそれほど荒れた生活を送ってきた
ような感じではないし、ちょっとしっくりこない。
次に、北川の弟の春樹はどうしてあんな人間なのか。北川は大学を出て仕事をして家庭を築いて、
ある意味まあまともな人間である。強盗を思いつくような人間がまともかと言うとそうではない
のだが、少なくとも表面的、世間的にはまともだろう。
それに比べて弟の春樹は高校中退、それはいいとしてもびっくりしたのは彼の食事の仕方だ。
いわゆる犬食い、握り箸。弟は親からちゃんとした躾をされなかったのか?何故弟だけ?
あの食べ方を見た時にはぞっとした。
それから、モモはあだ名であるが、「正体不明の桃太郎」から来ているのだが、どうして桃太郎が
正体不明なのか?意味がわからないのだが。この辺りは原作を読めばわかるのだろうか。
わからない部分もあったが、全体的に私は楽しめた。あ、ひとつだけ残念なことが。主題歌が
安室奈美恵なのだ。どうしてあんな歌手を使うのか。せっかくの映画が安っぽい感じになって
しまった。