猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

洗礼

2014-08-22 02:31:17 | 日記
楳図かずお氏の漫画「洗礼」。
美貌の大女優若草いずみは、子役の頃から自分の美しさを意識して生きてきた。
そして、年を取って醜くなっていくことを異常に恐れていた。いずみはその
悩みを、幼い時からの主治医である村上医師に興奮してぶつける。村上医師は
ある提案をする。それは、いずみが女の子を産んで、その子がある程度の年齢に
なったら、いずみの脳をその子の頭に移植し、その子として人生をやり直すと
いうものだった。いずみは賛成し、どこの誰ともわからない男との間に子供を
作った。産まれた子供は念願の女の子だった。そして芸能界を引退し、母と子で
ひっそりと生きてきた。いずみはその頃顔に大きなアザができ、太っていて、
大女優だった頃の面影はなかった。いつか娘の頭に脳を移植する日を夢見て、
それだけを心の支えに生きてきた。一方さくらと名付けられた娘はいずみの
子供の頃そっくりの美少女に成長した。母親思いの優しい子だった。そして、
脳の移植手術の実験を繰り返していた村上医師は、とうとうそれに成功した。
そしてさくらは何も知らないまま、手術が行われることになった。

怖い物語である。人は(女性は)こうまで美しさに執着できるものだろうか。
幼児期からずば抜けて美しかった女優の、美に対する執着はわからないでもない。
人は誰でも若く美しくありたいと思うものだ。けれどもいずみとその主治医は、
人として超えてはならない一線を超えてしまった。
さくらに「私はあなたになるためにあなたを産んだの。悪いけどあなたに人生
なんかないのよ」と言って、さくらを手術台の上に乗せようとするいずみ。
かわいくて頭が良くて母親思いのさくらを、殺すことができるいずみ。
なんという業だろう。主治医も、産まれた子供が男の子だったら殺しなさいと
言っていた。
かくてさくらに成り代わったいずみの、次の目標はさくらの担任教師を手に入れ
ることだった。普通に結婚して、普通に暮らしたいという夢を叶えたかったのだ。
いずみは教師の家にまんまと入り込み、妻に壮絶な嫌がらせを始める。
この辺り映画「エスター」を思い出したのだが、本当に男の人ってなんて鈍いの
だろう。妻がどんなにあの子はおかしい、異常だと言っても、気のせいだろう、
で済ましてしまう。妻の方がおかしいという扱いをされてしまう。「エスター」の
夫も、妻の言い分を聞いていたら、殺されることもなかったのに。
いずみは教師を手に入れられるのか―。
ものすごくおもしろかった。ロマンチック・ホラーとでも言うのか。私は楳図
先生の描く美少女が好きだ。写実的で、緻密で、美しい。
楳図漫画の名作である。



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コメント
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