2021年の日本・アメリカ合作映画「太陽の子」を観に行った。
「この研究が成功すれば、戦争は終わる」―そう信じて実験に没頭する若き
科学者・石村修(しゅう/柳楽優弥)。太平洋戦争終盤、軍から密命を受けた
京都帝国大学物理学研究室では、荒勝教授(國村隼)の指導のもと研究員たち
が原子核爆弾の開発を急いでいた。そんな中、建物疎開で家を失った修の幼
なじみの朝倉世津(有村架純)が、修と母(田中裕子)の家で暮らすことになる。
1945年の初夏、修の弟・裕之(三浦春馬)も戦地から一時帰宅し、3人は久し
ぶりの再会を喜ぶが、修と世津は裕之が戦地で負った深い心の傷を目の当た
りにする。修もまた、核分裂エネルギーの底知れぬ破壊力と葛藤していたが、
世津だけは、戦争が終わった後の世界で力強く生きていくことを決意してい
た。やがて裕之は再会を誓って戦地へと戻り、修は実験を続けるが、運命の
8月6日、広島に新型爆弾が投下されてしまう。
昨年の8月15日にNHKでテレビドラマとしてパイロット版が放送された、そ
の映画版である。恥ずかしながら私は、日本も原子核爆弾を開発する研究を
していたことを知らなかった。「もし成功すれば、歴史に刻まれる」という
思いを胸に、京都大学の学生たちが開発を急いでいたのだった。それは、皆
が尊敬するアインシュタインの理論を具現化することだったが、一方で世界
を滅ぼしかねない研究でもあった。それでもアメリカやソビエトに負けじと
日本も研究に没頭していた。
研究員の修は子供の頃から科学者になりたいと思っており、死んだ父親から
軍人になれと言われても科学者の道を選び、弟の裕之は軍に所属していた。
修と母親が暮らす家に幼なじみの世津とその祖父を住まわせることになり、
やがて裕之も一時帰宅をする。実は修も裕之も世津に想いを寄せており、世
津は彼らを兄のように慕っていた。帰宅しても戦地での出来事を一言も話そ
うとしない裕之の様子に、修も母も世津も裕之の心の傷を慮った。
修は修で、科学者が人を殺傷する兵器を製造することに苦悩していた。修だ
けではなく学生たちは同じ思いを抱えていたが、戦争を終わらせるためには
開発するしかなかった。研究員の心の葛藤が繊細に描かれていて、その苦し
みが伝わってくる気がした。この映画には戦闘シーンは全くないのだが、戦
争がいかに残酷で、いかに虚しいものかがよくわかる。修は科学オタクのよ
うなところがあるが、計算は苦手というキャラクターだ。それでも放ってお
けば徹夜でも実験をしかねない修を、皆は頼りにしている。
科学者の狂気のようなものを体現している柳楽優弥の演技力はさすがだった。
彼に限らずキャストは皆素晴らしかった。あの顔ぶれを選んだ黒崎博監督の
目の付け所はすごいと思った。終盤広島と長崎に原子核爆弾が投下され、日
本が降伏する辺りは本当に悲しい。実際の写真も出てきて痛ましかった。日
本より先に新型爆弾の製造に成功したアメリカだが、爆弾を投下しなければ
戦争は終わらなかったのだろうか。ラスト近くで修がアインシュタインと英
語で語り合うシーンはとても良かった。若い人たちに観て欲しい映画だと思
う。劇中の裕之と三浦春馬くんの姿が重なって見えて、泣けてきた。
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「この研究が成功すれば、戦争は終わる」―そう信じて実験に没頭する若き
科学者・石村修(しゅう/柳楽優弥)。太平洋戦争終盤、軍から密命を受けた
京都帝国大学物理学研究室では、荒勝教授(國村隼)の指導のもと研究員たち
が原子核爆弾の開発を急いでいた。そんな中、建物疎開で家を失った修の幼
なじみの朝倉世津(有村架純)が、修と母(田中裕子)の家で暮らすことになる。
1945年の初夏、修の弟・裕之(三浦春馬)も戦地から一時帰宅し、3人は久し
ぶりの再会を喜ぶが、修と世津は裕之が戦地で負った深い心の傷を目の当た
りにする。修もまた、核分裂エネルギーの底知れぬ破壊力と葛藤していたが、
世津だけは、戦争が終わった後の世界で力強く生きていくことを決意してい
た。やがて裕之は再会を誓って戦地へと戻り、修は実験を続けるが、運命の
8月6日、広島に新型爆弾が投下されてしまう。
昨年の8月15日にNHKでテレビドラマとしてパイロット版が放送された、そ
の映画版である。恥ずかしながら私は、日本も原子核爆弾を開発する研究を
していたことを知らなかった。「もし成功すれば、歴史に刻まれる」という
思いを胸に、京都大学の学生たちが開発を急いでいたのだった。それは、皆
が尊敬するアインシュタインの理論を具現化することだったが、一方で世界
を滅ぼしかねない研究でもあった。それでもアメリカやソビエトに負けじと
日本も研究に没頭していた。
研究員の修は子供の頃から科学者になりたいと思っており、死んだ父親から
軍人になれと言われても科学者の道を選び、弟の裕之は軍に所属していた。
修と母親が暮らす家に幼なじみの世津とその祖父を住まわせることになり、
やがて裕之も一時帰宅をする。実は修も裕之も世津に想いを寄せており、世
津は彼らを兄のように慕っていた。帰宅しても戦地での出来事を一言も話そ
うとしない裕之の様子に、修も母も世津も裕之の心の傷を慮った。
修は修で、科学者が人を殺傷する兵器を製造することに苦悩していた。修だ
けではなく学生たちは同じ思いを抱えていたが、戦争を終わらせるためには
開発するしかなかった。研究員の心の葛藤が繊細に描かれていて、その苦し
みが伝わってくる気がした。この映画には戦闘シーンは全くないのだが、戦
争がいかに残酷で、いかに虚しいものかがよくわかる。修は科学オタクのよ
うなところがあるが、計算は苦手というキャラクターだ。それでも放ってお
けば徹夜でも実験をしかねない修を、皆は頼りにしている。
科学者の狂気のようなものを体現している柳楽優弥の演技力はさすがだった。
彼に限らずキャストは皆素晴らしかった。あの顔ぶれを選んだ黒崎博監督の
目の付け所はすごいと思った。終盤広島と長崎に原子核爆弾が投下され、日
本が降伏する辺りは本当に悲しい。実際の写真も出てきて痛ましかった。日
本より先に新型爆弾の製造に成功したアメリカだが、爆弾を投下しなければ
戦争は終わらなかったのだろうか。ラスト近くで修がアインシュタインと英
語で語り合うシーンはとても良かった。若い人たちに観て欲しい映画だと思
う。劇中の裕之と三浦春馬くんの姿が重なって見えて、泣けてきた。
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