猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

左利きの女

2023-11-12 21:45:59 | 日記
1977年の西ドイツ映画「左利きの女」。

専業主婦として暮らすマリアンネ(エディット・クレヴァー)は、北欧
出張から帰ってきたばかりの夫ブルーノ(ブルーノ・ガンツ)に突然別
れを告げる。8歳の息子シュテファン(マルクス・ミューライゼン)を
1人で育てることを決意した彼女は、かつて働いていた出版社を頼っ
て自宅でフランス語の翻訳の仕事を始めるが、なかなか思い通りにい
かない。

名匠ヴィム・ヴェンダースが製作、ヴェンダース監督作の脚本でも知
られるオーストリアの作家ペーター・ハントケが、自身の小説を基に
初監督を務めた人間ドラマ。専業主婦のマリアンネは、北欧での長期
出張から帰ってくる夫ブルーノを迎えに空港へ行く。夫婦は再会を喜
び合い、レストランでディナーを食べる。機嫌のいいブルーノはその
ままホテルに泊まろうと言い出す。一夜明けて帰宅すると、息子のシ
ュテファンがブルーノに飛びつき、お土産に喜ぶ。だがマリアンネは
ブルーノに離婚したいと告げる。
いかにもヨーロッパ映画らしい、画面が暗くて(古い映画だからなの
かもしれないが)登場人物1人1人の心情がわかりにくい映画だ。でも
私は最初から惹き込まれた。映像がいい。美しいというのとは違うが、
街並みがとても魅力的。結局マリアンネとブルーノは離婚するのだが、
そこに至るまでの夫婦のやり取りや口論のようなものが一切描かれて
おらず、いつの間にか離婚している。ブルーノは息子のことを考えて
家をマリアンネに譲り、自分が出ていく。
マリアンネは昔勤めていた出版社のツテでフランス語の翻訳の仕事を
得る。その出版社の社長がマリアンネの家を訪ねてくるシーンは印象
的だ。黄色いチューリップの花束を持ってくるが、薄暗い部屋に黄色
のチューリップが映える。シュテファンと3人でシャンパンで乾杯す
るが、ドイツは子供がお酒を飲んでいいのかな、と思った。在宅で仕
事を始めるマリアンネだが、なかなか思うように進まない。シュテフ
ァンが友達を連れてきて遊ぶから、うるさいのだ。ブルーノも度々訪
れてきては復縁を迫るし、マリアンネは追い込まれていく。
そもそもマリアンネが何故離婚したいと思ったのか、明確に描かれて
いない。専業主婦に飽きて、自分で子供を養いたいと思ったのだろう
か。ブルーノは「息子がかわいそうだと思わないのか」と言う。私は
ヘンリク・イプセンの「人形の家」のノラを思い浮かべたのだが、ノ
ラの場合夫と決別するはっきりとした理由があった。しかしマリアン
ネにはそれが感じられない。夫に家も譲ってもらって、離婚しても恵
まれているというか、好きにやれば、という気持ちになる。
今ひとつ背景がわからない映画ではあったが、やっぱりドイツ映画は
おもしろいと思った。ラストシーンで字幕が出てくる。「ここにいる
ことができるのに、居場所がないなどとは、思うべきではない」とい
った感じの文章だが、とても深い言葉だと思った。



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コメント (4)
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