チエちゃんの昭和めもりーず

 昭和40年代 少女だったあの頃の物語
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第186話 氷水屋さん

2010年08月12日 | チエちゃん
 和光堂の隣の隣は、夏の間だけ営業する氷水(こおりすい)屋さんでした。
シーズンオフの期間は、ぴっしりと戸が閉められた普通のお家なのですが、夏になると氷水だけを売るお店屋さんに早変わりするのです。屋号の看板も何もなく、ただ、「氷」ののぼりだけが店先に掲げてありました。
長嶺さんというチエちゃんの村では珍しい苗字でしたが、お店の屋号は分からずじまいで、ただ、「こおりすいや」さんと呼んでいたように思います。

 店内に入ると、広い土間にいくつかのテーブルとイスが並べられ、奥の方には、長嶺さんちの開け放った座敷が見えていました。そして、土間と座敷の間の板の間には、大きな木製の冷蔵庫と、氷削り機が据え付けてありました。
氷水を注文すると、おばさんが、その冷蔵庫から、大きくて四角い透明な氷を取り出し、氷削り機に据え付け、シロップを入れたガラスの器に、ガリガリと盛り良く氷を削ってくれたものでした。

 チエちゃんにはとても不思議に思えたものです。
大きな氷の時は透き通っているのに、細かく削ると雪のように真っ白になるのだろうと。
それに、木の冷蔵庫って、融けないのだろうかと。

 運ばれてきた氷水の器から、氷をこぼさないように、そっとスプーンを引き抜き、手で少し氷を固めます。それから、スプーンで、氷を崩して、器の下の方の甘いシロップが上手に絡むように混ぜながら食べていくのです。
あわてて食べると、キーンと頭が痛くなりましたよね。

 イチゴ、メロン、レモンは30円。練乳をプラスすると50円。あずきミルクは70円だったかな?

買い物帰りに、氷水屋さんに寄るのが、とても楽しみなチエちゃんでした。
お父さんやお母さんと食べるときは、いつもイチゴだったけれど、おばあちゃんと食べるときは、あずきミルク。おばあちゃんの好物でしたから。
もちろん、チエちゃんもイチゴより、あずきミルクの方が好きでしたよ。