秋田県で、「雪で車庫がつぶれてしまいますよ」と言って騙す手口の悪徳商法が起きたとか。人の弱みにつけこむ許せない手口だが、幸い、契約をせず被害には合わなかったそうだ。
考えてみれば、愚かな手口で、私たち雪国育ちの人間は、どの程度の雪で屋根雪を下ろせば良いかは経験則で熟知している。我が家ではふすまや障子の開けたてが重くなった時点で判断している。生活実感であり、知恵である。評論家が机上計算で、「1メートル四方の雪が屋根にかかる荷重は、、、」などと解説するのを聞くと、笑えて来てしまう。
子供の頃、雪かきをする時には、「お隣りとの境界より少し向こうまでやりなさい」と親に教えられた。すると次の日には、我が家の領分まで雪かきされていた。顔を合わせると「ありがとう」「よく降るねえ」が挨拶代わりだった。雪国ならではの互助の精神がたしかに息づいていた。ところが、最近では雪かきどころか雪を捨てるマナーさえ知らない人が増えているそうで、市が注意を呼びかけている。用水に大量に雪を捨て帰るので、とけた水が道まであふれ床下浸水の被害まで出ているのだ。
我が家は、前と隣地が畑と空き地なので、雪捨て場に困らないが、反面、誰も除雪しないので、私の守備範囲は広くなってしまう。女房は雪と無縁な土地の育ちなので、怪訝そうに見ているだけだが、私は子供の頃の教えを思い出しながら、良いトレーニングだと思うことにして、毎日、雪かき作業にいそしんでいる。