シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「バーニー みんなが愛した殺人者」(2011年アメリカ映画)

2013年08月11日 | 映画の感想・批評
 実話の映画化であるが、ずいぶん明るく撮っているのがいい。
 テキサス州は大きく5つに分かれ、それぞれ気風や文化が違うという解説が冒頭に入る。その中部に位置するカーセージという小都市が舞台である。葬儀屋の助手に就職した30代後半のバーニー(ジャック・ブラック)は、いかつい身体に似合わず人当たりがよくてやさしい性格なので、とりわけ中高年婦人には滅法人気がある。アイデアマンで葬儀に趣向を凝らし経営者の信頼も厚い。敬虔な信者であるかれは賛美歌を得意とし、日曜の教会の礼拝でもみんなを先導する役割を演じている。そんなかれが地元の資産家の葬儀を担当し、高慢で知られる町の鼻つまみ者の未亡人(シャーリー・マクレーン)に気に入られ、身の回りの世話をするうちに、召使い代わりにこき使われることになって、ある日もののはずみで未亡人を射殺してしまうのだ。ガレージの冷凍庫に遺体を隠し、未亡人は脳梗塞で倒れて療養中だと繕う。彼女を上得意とする株式仲買人がまったく連絡のとれないことを不審に思い、町の保安官に家宅捜索を要請する。こうして遺体が発見され、重要参考人として呼ばれたバーニーはあっさり犯行を自供するのである。
 町の人びとは「虫も殺せないバーニーに殺人なんかできっこない。よしんば事実としてもあのクソババアが悪いに決まっている」と噂する。こういう被告側に有利な状況では公正な裁判など望めない。そこで、例外的に管轄外の隣接する郡の裁判所で審理されることになる。冒頭の説明がここで生きてくる。
 ドラマの合間に町の人びとがインタビューに答える形式でバーニーの人となりを語る。芸達者なブラックが演じるだけでもキャラは十分伝わってくるが、人びとの口を通してさらなるバーニー像の肉付けがされるという趣向だ。南部のマッチョからすると、バーニーは「シシー(女っぽい)」に映るのだが、それでも人びとは「かれの個人的な嗜好などどうでもいい」と言ってのけてバーニーをかばうのである。
 最後のクレジットタイトルで、服役中の本人にブラックが面会(取材)している場面が出る。いかにも人のよさそうな男だった。(ken)

原題:Bernie
監督:リチャード・リンクレイター
脚本:リチャード・リンクレイター、スキップ・ホランズワース
撮影:ディック・ポープ
出演:ジャック・ブラック、シャーリー・マクレーン、マシュー・マコノヒー、ブラッディ・コールマン、リチャード・ロビショー、リック・ダイアル