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ワンチャンス(2013年イギリス映画)

2014年04月01日 | 映画の感想・批評
 4,5年前に日本でも話題になったスーザン・ボイルという女性を覚えているだろうか。見かけはぱっとしないが、彼女が歌いだすとその美しい歌声に聴衆はうっとりと魅了された。そんな彼女が登場し注目されたのが、イギリスのオーデション番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」だ。
 本作の主人公ポール・ポッツもまた、その番組から生まれたオペラ歌手である。予告編を見た時、ポール・ポッツが実在のオペラ歌手とは知らなかったので、てっきりスーザン・ボイルからヒントを得て製作されたフィクションかと思った。歌い出すまでのシャイで自信のなさそうな雰囲気が似ていた。
 子どものころからいじめられっ子、今は冴えないケータイ販売員のポールだが、いざという時には彼を応援してくれる人たちがいた。息子のオペラ好きを認めない鋳鉄労働者の父親とは対照的に、ポールに協力的な母親。メル友だったジュルズに、ポールの代わりに勝手にデートの約束を送信する販売店のボス。ヴェネチアのオペラ学校で学びたいというポールの夢を後押ししてくれたジュルズ。
 しかし、ポールはヴェネチアで憧れのパヴァロッティの前で歌う機会を得たが、「君はオペラ歌手には向いていない」と言われすっかり自信をなくして帰郷。「オペラ歌手になりたい」という夢を実現できず、このままただの「オペラ好き」に終わるのかと思われたポールに、人生最大のチャンスが訪れる。「ブリテンズ・ゴット・タレント」に出場が決まったのだ。
 ポールが出場応募に躊躇した時、舞台そででパヴァロッティの言葉を思い出し怖気づいた時、彼を励まし勇気づけてくれたのは妻のジュルズだった。ポール・ポッツの現在の活躍は、本人の才能はもちろんだが、愛する人の才能を信じ、躊躇っている時には実力を発揮できるよう背中を押してくれる人たちがいたからこそである。映画の中でポールが歌う楽曲の吹き替えを本人が行っているのも嬉しい。(久)

原題:One Chance
監督:デヴィット・フランケル
脚本:ジャスティン・ザッカム
撮影:フロリアン・バルハウス
出演:ジェームズ・コーデン、アレクサンドラ・ローチ、ジュリー・ウォルターズ、コルム・ミーニー