すべてが予想を覆す映画だ。超えてしまっているといった方がいいか。まず、タイトルが出る。「Whiplash」あれっ?!「Session」じゃあないのか。ヒップラッシュって、なんという意味だっけ?と思っているうちに主人公アンドリュー・ニーマンが登場。彼は若くして才能に恵まれる19歳のジャズ・ドラマー。アメリカで最高の音楽学校に進学し、日々孤独に練習に打ち込んでいる。なかなか上手だ。
彼が学ぶ初等教室に音楽学校の中でも最高の指揮者として名高いテレンス・フレッチャーがやってくる。いわゆる“引き抜き”ってやつだ。フレッチャーの目に留まったニーマンは彼のスタジオ・バンドに招かれ、腕を試されることに。さあ、これからニーマンの成功物語が始まると思いきや、このフレッチャー先生が半端じゃあない。ものすごく怖いのだ。彼はバンドの“セッション”については徹底した完璧主義者で、ちょっとでも音色やテンポが違っただけで容赦なくメンバーに怒声を浴びせる。時にはイスを投げつけることも。初日からニーマンも「Whiplash」という曲を練習している最中にその対象となる。ひと昔前なら日本にもこんな鬼先生がいたかもしれないが、「体罰」が問題となる今では貴重な存在だ。(少し懐かしい感じもするが・・・)しかしニーマンはへこたれない。彼をやっつけるには、とにかくどんな曲でも演奏できるように練習すること。この気構えが何とも頼もしい。
「Whiplash」とは“鞭打ち”という意味だと分かって納得した。フレッチャーを見事に演じ、観客までも鞭打って異常な緊張感を与えてくれたJ・K・シモンズはアカデミー賞助演男優賞を受賞。編集賞と録音賞も獲得したが、自らジャズドラムを演奏し、一途なニーマンを演じきったマイルズ・テラーにも注目。特にラスト9分19秒の怒涛の演奏シーンは強烈だ!二人が目指していたのはまさにこれ!!こんな映画史に残る傑作を監督したのは、かつてジャズバンドに所属したこともあるというデイミアン・チャゼル。忘れないでおこう。
(HIRO)
原題:「Whiplash」
監督:デイミアン・チャゼル
脚本:デイミアン・チャゼル
撮影:シャロン・メール
音楽(音響ミキシング):クレイ・マン、ベン・ウィルキンズ、トーマス・カーリー
編集:トム・クロス
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ、メリッサ・ブノワ、ポール・ライザー