1974年、アメリカニューヨークのワールドトレードセンタービルの屋上と屋上をロープで繋いで渡った大道芸人の話で、実話の映画化である。私の事前情報はそれだけだったので、スリル満点のパニック映画かと思いきや、そこは、監督・脚本がアカデミー賞受賞監督のロバート・ゼメキス。良い意味で裏切られ、前半は、この曲芸を成功させる為の訓練や協力者集め、現地の下調べに奔走する姿が丹念に描かれ、これが、一人の男が、気が変になるくらい思い詰め、そして情熱を掛けたもので、一日一夜で成功出来たものではないことを理解させた上で、後半のクライマックスの綱渡りシーンへ導くのは流石である。更に、良かったのは、都度つど、主人公によるナレーションが入り、テンション上げっぱなしにならないように描かれ、一端のパニック映画にはなっていない。かなり、脚本は練られている印象を持った。
後半の綱渡りシーンも良かったが、この曲芸を達成した後の主人公の堂々たる姿と、違法と分かりながらも、祝福する人達の爽快さを表したシーンも良かった。ラストに友人から発せされる「タワーに命を吹き込んだ」というセリフがある。主人公はそこで「気付いた」のである。何故この曲芸をやったのか。自己満足や名声を手に入れる為ではない。停滞感漂うアメリカに、いや、世界に「やれば出来る」というメッセージを送ることだったのだと。あの時代(劇中ではニクソン退任)にやる意味があったのだと。
最近は、3Dが大流行である。3Dの必要性を感じない映画まで登場しているように思うが、本作品は、是非、3DもしくはIMAXで観てもらいたい。私はIMAXで観た。IMAXは初めてだったが、立体感は2D以上に感じられるはず(2Dでは観ていないから想像だが)だし、綱渡りシーンは手に汗握ること間違いなし。「手に汗握る」は一般的表現だが、この表現がピッタリ。落ち着かず、何度も姿勢を変え、手の汗を拭った。ちなみに、私は極度の高所恐怖症なので、このシーンでは、この映画を観たことを後悔したのも事実ではあるが・・・。
(kenya)
原題:「The Walk」
監督:ロバート・ゼメキス
脚本:ロバート・ゼメキス、クリストファー・ブラウン
撮影:ダリウス・ウォルスキー
音楽:アラン・シルヴェストリ
出演:ジョエフ・ゴードン=レヴィット、ベン・キングスレー、シャルロット・ルボン、ジェームズ・バッジ・デール、クレマン・シボニー、セザール・ドンボイ