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イマドキの若者というか高校2年生のゆるーい会話だけで成立させた不思議な映画である。8つのエピソードから構成された75分という短い時間があっという間に過ぎる。
イケメンで成績優秀だが無口で暗くて友達のいない内海(池松壮亮)は学校が終わってから塾の始まる時間を川縁で過ごす。ある日、クラブ活動を事情があってやめざるを得なくなったひょうきんでお調子者の瀬戸(菅田将暉)が放課後の時間をもてあまして川縁にやって来る。こうして、この対照的なふたりの男の子が毎日適当な距離感を置いて川辺の石段に座り、掛け合い漫才そのままに関西弁のゆるーい会話を始めるのだ。しかも、ボケと突っ込みが絶えず逆転し、今が旬の実力派売れっ子男優ふたりがまさに火花を散らして演技を競い合う。おそらくアドリブもあるのだろう。
マドンナというべき少女(中条あやみ)が現れるが、結局かの女はふたりの間に入り込むことができずやきもきする。高校2年生という設定が利いてくるところだろう。恋愛感情よりも友情のほうが先行しているのである。しかし、その友情にしたって、まさしくイマドキというか、相手の領域に対して一定の範囲以上には入り込むことをせず、他人行儀と友愛の狭間を微妙なバランスで行きつ戻りつしているのがおかしい。
凍えるように寒い冬の夕暮れどきに瀬戸が身体を丸めて川縁で震えながらひたすら内海の来るのを待っていると、内海がだいぶ遅れてやって来る。いつものように適当な距離感で並んで座るふたり。瀬戸にさんざん寒い思いをさせておきながら内海は鞄から暖かい飲み物を出して自分だけ呑む。それを瀬戸が見つめると、内海は気がついたようなフリをして飲みさしの缶を瀬戸に差し出す。瀬戸が受け取って呑む傍らで、内海が缶をもうひとつ鞄から取り出して素知らぬ顔で飲み始めるラストショットには笑った。この無言のやりとりに、男同士の照れとふたりの関係性の深まりがよく表現されていた。
私は原作を知らないが、大森立嗣はその雰囲気を壊さずに心がけたのだろう。ストップモーションやスローモーションなどのテクニックを駆使して、ややもすると平板で平面的になりそうな正面からの固定ショットを飽きさせないよう工夫しているように思った。今年の日本映画の収穫のひとつである。音楽もまたすばらしい。(健)
監督:大森立嗣
原作:此元和津也
脚色:宮崎大、大森立嗣
撮影:高木風太
出演:池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ
イマドキの若者というか高校2年生のゆるーい会話だけで成立させた不思議な映画である。8つのエピソードから構成された75分という短い時間があっという間に過ぎる。
イケメンで成績優秀だが無口で暗くて友達のいない内海(池松壮亮)は学校が終わってから塾の始まる時間を川縁で過ごす。ある日、クラブ活動を事情があってやめざるを得なくなったひょうきんでお調子者の瀬戸(菅田将暉)が放課後の時間をもてあまして川縁にやって来る。こうして、この対照的なふたりの男の子が毎日適当な距離感を置いて川辺の石段に座り、掛け合い漫才そのままに関西弁のゆるーい会話を始めるのだ。しかも、ボケと突っ込みが絶えず逆転し、今が旬の実力派売れっ子男優ふたりがまさに火花を散らして演技を競い合う。おそらくアドリブもあるのだろう。
マドンナというべき少女(中条あやみ)が現れるが、結局かの女はふたりの間に入り込むことができずやきもきする。高校2年生という設定が利いてくるところだろう。恋愛感情よりも友情のほうが先行しているのである。しかし、その友情にしたって、まさしくイマドキというか、相手の領域に対して一定の範囲以上には入り込むことをせず、他人行儀と友愛の狭間を微妙なバランスで行きつ戻りつしているのがおかしい。
凍えるように寒い冬の夕暮れどきに瀬戸が身体を丸めて川縁で震えながらひたすら内海の来るのを待っていると、内海がだいぶ遅れてやって来る。いつものように適当な距離感で並んで座るふたり。瀬戸にさんざん寒い思いをさせておきながら内海は鞄から暖かい飲み物を出して自分だけ呑む。それを瀬戸が見つめると、内海は気がついたようなフリをして飲みさしの缶を瀬戸に差し出す。瀬戸が受け取って呑む傍らで、内海が缶をもうひとつ鞄から取り出して素知らぬ顔で飲み始めるラストショットには笑った。この無言のやりとりに、男同士の照れとふたりの関係性の深まりがよく表現されていた。
私は原作を知らないが、大森立嗣はその雰囲気を壊さずに心がけたのだろう。ストップモーションやスローモーションなどのテクニックを駆使して、ややもすると平板で平面的になりそうな正面からの固定ショットを飽きさせないよう工夫しているように思った。今年の日本映画の収穫のひとつである。音楽もまたすばらしい。(健)
監督:大森立嗣
原作:此元和津也
脚色:宮崎大、大森立嗣
撮影:高木風太
出演:池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ