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華氏119(2018年アメリカ)

2018年11月07日 | 映画の感想・批評
 何で今ごろ「華氏911」などと思った慌て者はいないだろうか?実は私もそんな慌て者の一人だったのだが…。9・11米同時多発テロ以降のジョージ・W・ブッシュ政権の問題点を徹底検証し、2004年カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した「華氏911」から14年、“アポなし突撃男”マイケル・ムーア監督が、2016年11月9日ドナルド・トランプが米大統領選の勝利宣言をした日をタイトルに、タイムリーなドキュメンタリー映画を製作した。
 2016年11月、誰もが「あり得ない」と思っていた事態が起こった。アメリカ合衆国大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプが民主党のヒラリー・クリントンを破って当選したのだ。一体なぜこんなことになったのか?
 当選してからは言いたい放題、やりたい放題のトランプ大統領だ。「すべてのイスラム教徒のアメリカ入国拒否」、「メキシコとの国境に万里の長城をつくろう」、「世界同時株安は中国のせい」、「地球温暖化?嘘っぱちだ」などなど。「アメリカは日本を守るために多額の金を払っている。日本から米軍を撤退させるべきだ」とおっしゃるトランプ大統領、これに関してはぜひとも実現を!!
 アメリカファーストという過激な言葉で現状に不満を抱く人々をあおり、世界に分断を持ちこむトランプ大統領に呼応するような事態が、世界のあちこちに起きている。ヨーロッパでは反EU、移民排斥を掲げる政党が議席を伸ばしている。つい最近もブラジルファーストを叫ぶボルソナロ大統領が誕生した。
 ムーア監督はトランプ政権のからくりを暴くだけでなく、民主党にも批判の矛先を向けている。潤沢な企業献金で選挙戦を戦う共和党に勝つため、民主党は共和党のような政策を進めて支持者を失望させていると。
 そんな中で中間選挙に向けて民主党から連邦議会に立候補して、草の根の選挙運動を始めた新人たちがいる。また、今年2月14日フロリダの高校で起きた銃乱射事件で生き残った高校生たちの銃規制強化の訴え、教師による賃上げ要求ストライキ、汚染水問題に抗議する住民など、巨悪に立ち向かう個人の勇気ある行動も紹介している。
 当初はすぐに本性を現わし、無能もばれて、世界中からのブーイングで“任期途中で罷免”などという予想が飛び交っていたトランプ大統領。あれから2年、国際社会をますます混乱に陥れて、ついに大統領当選後初めての中間選挙を迎えている。「華氏119」が2018年11月6日の中間選挙、さらに次の“再選”を阻止するための一撃となるか。日本時間の11月7日昼過ぎには大勢が判明する。(久)

原題:FAHRENHEIT 11/9
監督:マイケル・ムーア
脚本:マイケル・ムーア
撮影:ジェイミー・ロイ、ルーク・ゲイスブーラー
出演:ドナルド・トランプ、マイケル・ムーア、ヒラリー・クリントン、バーニー・サンダース