36年前公開された1作目「トップガン」の続編。本作は副題に「マーヴェリック」が付いている。トム・クルーズの役名だ。前作より、役柄にスポットを当て、製作にも名を連ね、自分自身が歩んできた人生になぞらえて、集大成的な作品と捉えているのではないか。並々ならぬ意気込みを感じる。
前作を未観でも、都度、振り返りシーンがあり、楽しめると思う。私は観ていたので、冒頭で、前作と同じ音楽を聴くだけでもワクワク。トム・クルーズは年輪が積み重なった表情だが、まだまだ元気一杯。戦闘機とバイクで並走もするし、2階の窓からも軽々と抜け出す(ネタばれ)。前作で、敵対していたアイスマンも登場する。だが、今は”アイスマン”ではなく、よき理解者として、手を差し伸べる。昔の相棒の息子も登場する、等々、前作へのオマージュ感が半端ない。エンドロール最後にもその気持ちが表現されている。
物語は、結末を心配する必要はなく、映画館の座席に身を任せ、ポップコーンとジュースと映像と音楽に戯れる。何と幸せな空間・時間か。細部を気にする必要はない。これぞ往年の「THE HOLLYWOOD」である。アメリカ人のためのアメリカ人によるアメリカ映画である。いえ、トム・クルーズのためのトム・クルーズによるトム・クルーズの映画である。主人公が、目標を達成する為に頑張ろうとするが、それを様々な理由で邪魔をする人々が現れる。だが、主人公は、自らの血の滲むような努力と周りの暖かい支えで、それらを克服し、成功を掴み取るサクセスストーリー。正に、彼自身だろう。そこに、手に汗握るアクションが盛り込まれ、映画館で観る映画に昇華される。是非、映画館で観ることをお薦めします。
CGを使わず、撮影されたらしい。確かに、戦闘機を操縦するシーンは「G」が掛かる生々しさが強く伝わる。思わず、自分も息を止めて力が入る。
残念なのは、今は、否応が無しに、敵対する相手は、ロシアになってしまう事だ。相手の飛行機の国籍もパイロットの顔も表情も分からないようにしているが、あの人の顔が出てきてしまう。この時期の公開で気の毒というところか。もう1点。終盤のアクションはちょっと無理があるのでは。イーサン・ハント(イーサン・ハントも彼自身なのだろう。もしかして、混同した???)もビックリの身体を張ったシーンの連続で、少し引いてしまった。007もランボーも呆気にとられるに違いない。「トップガン」ってそんな映画でしたっけ?
(kenya)
原題:Top Gun : Maverick
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:アーレン・クルーガー、エリック・ウォーレン・シンガー、クリストファー・マッカリー
撮影:クラウディオ・ミランダ
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、グレン・パウエル、ヴァル・キルマー、エド・ハリス