第4話
『曲球る(まがる)』
ボールの球種の検証を宗田に説明している湯川。
一緒にプロ野球選手の柳沢もいる。
柳沢の投球がプロで通用しなくなった理由を
物理的に検証することになったよう。
一方、民家で火事が発生。
出火場所は物置にあったストーブ。
発見は早かったが、この家の主である柳沢妙子が、
一酸化炭素中毒で死亡した。
妙子は柳沢の妻だった。
そこで柳沢から話を聞くことに。
妙子は3週間くらい前に家を出て実家にいたよう。
柳沢が戦力外通告されたことから口喧嘩に。
そして妙子が浮気していると指摘すると、
妻が何も言わないので出て行けと言い、
妙子はそのまま出て行ったらしい。
妙子の乗っていた車の助手席には紙袋があり、
中野の箱は一度開けられた形跡が。
箱の中には置時計が入っていた。
誰かへのプレゼントだったのかもと言う美砂に、
浮気相手じゃないかと柳沢。
浮気相手に心当たりはないとのこと。
柳沢を容疑者だと思っている美砂。
しかし柳沢はその時、ピッチングの練習をしていた。
アリバイを証明してくれるのは宗田と湯川だと。
湯川の名前を聞き驚く美砂。
ピッチングモーションを映し出す装置を使い、
柳沢のフォームを検証していた湯川。
フォームが良くても球のキレがない。
妻が亡くなったのに野球をしている柳沢に呆れ気味の美砂。
「君のせいだ」と言い出した湯川。
柳沢は復活出来るはずなのに、
奥さんの死が柳沢に影響を与えている。
だから警察が早く犯人を捕まえないから美砂が悪いと。
美砂は捜査状況を説明。
疑わしいのは不倫相手だけど、
それが誰だか分からないとのこと。
そして、犯人は何故わざわざ物置にしまいこんでいた
ストーブに火をつけたのか。
「現象には必ず理由がある。
どんなストーブだったんだ?
出火原因を突き止める。」
「捜査に協力してくれるんですか?
先生が自分からそんなこと言い出すなんて。
実に面白―」
「面白くない。」
早速、出火原因のストーブを調べる湯川。
ボタンを押しただけで点火出来るタイプで、
ボタンを押さずに点火すると時は、
カバーを開けてライターか何かで
直接芯に火をつければいい。
でもライターを持っていたなら、
他の場所に火をつければいいだけのこと。
「ボタンを押して点火させるストーブには主に2種類 ある。
一つは電圧によりフィラメントを温め、
気化した灯油に着火させる点火ヒーター式。
もう一つはイグナイターに高圧電流を流し、
火花を発生させる高圧放電点火式。
更に直接火をつけるやり方だ。」
何やら調べている湯川。
「なるほど。」
「分かったんですか?
もう分かっちゃったんですか? 湯川先生。」
「さっぱり分からない。」
事件現場を見に行くことに。
美砂が自分の考えを話すが・・・
「僕は柳沢さんの奥さんを殺した犯人にも、
その動機にも全く興味はない。」
「分かってます。」
「ましてや彼女が不倫をしてようが、
その不倫相手がどんな人間だろうが、
そんなことはどうでもいい。」
「犯人がどうやってストーブに点火したか。
それを知りたいだけなんでしょ? 湯川先生は。」
「そして事件を解決に導き、
柳沢さんを野球に専念させ、物理学でプロのピッチャーを
カムバックさせられることを実証したいんだ。」
近くのマンションの自動ドアが
開いたり閉まったりしているのを目撃した湯川は、
突然計算を始めた。
そして公道へ出て「50mもない」と呟き、
トラックに立っているアンテナを見た湯川。
「なるほど。 そういうことか。」
湯川の研究室に事件現場と同じストーブを用意した美砂。
実験を開始。
ストーブの前に置いた無線機のスイッチを入れると、
なんとストーブが着火!!
電子回路システムが無線によって起動したよう。
通常こういうことは起こりにくい話。
だが無線の出力をUPすれば、
遠くから影響を与えることも可能になると。
例えば50m離れた幹線道路からでも。
そんなに強い無線は、
電波法で禁じられている違法な無線機だと湯川。
「あの幹線道路が、違法無線機を取り付けた
車の走行ルートだったとしたら。
妙子さんの実家から最も近い信号で停止中に
無線機を使用した場合、
違法電波がストーブの電子回路システムを反応させ
発火した可能性がある。」
自動ドアの開閉も違法無線の影響だと。
つまり事故で、放火ではない。
柳沢の投球検証を続ける湯川。
フォームも球威も申し分はない。
が、球に気持ちがこもっていないと宗田。
後は柳沢のメンタル部分だけ。
宗田は半ば諦めモードだが、
湯川はまだ諦めておらず柳沢を説得。
妙子の件は放火ではなく不慮の事故だと。
奥さんを亡くされた悲しみは分かる。
しかし球威は戻ってきたのだから、
もう少し頑張ってみてはどうかと。
でも柳沢からすれば何も解決してはいない。
妙子は浮気をしていたのだから・・・
妙子が乗っていた車が錆びているのに気づいた湯川。
その時、柳沢のファンだという子供が寄って来た。
柳沢の現役復帰を信じていると言う子供。
もう無理だと言う柳沢に、出来ると言う湯川。
「分かりました。
柳沢さんに科学の可能性をお見せしましょう。
奥さんの不倫相手を見つけだしてさしあげます。」
まずは柳沢の奥さんの車の錆びの原因。
都内近郊で強アルカリ性の薬剤がまかれた事故、
もしくは事件がなかったか調べるよう美砂に頼む。
「えっ? なんで私がそんなこと?」
「調べてくれないなら、今後一切君とは接触しない。」
早速調べた美砂。
すると丁度事件のあった日に、
ホテルの駐車場で作業員が誤ってその装置を
作動させてしまったという事故が発生していた。
その時ホテルにいた車を全部調べるよう言う湯川。
「だから事件性はありません。」
「断るなら今後一切、君とは接触しない。」
「喜んで。」
調べると妙子の車が写っていて、消化剤を浴びたよう。
つまり妙子はこの日、このホテルにいたということに。
やはり不倫相手なのか・・・
柳沢が気になっていて野球に身が入らないなら、
真実を明らかにするしかないと湯川。
けど美砂は妙子はもう亡くなってるし、今更だと。
「あのね先生。
世の中には知らない方がいいっていうことがあるんです。」
「柳沢さんは知りたいと仰った。」
「先生には関係ないでしょ?」
「大いに関係ある。
メンタルなどという曖昧なもので、
僕の実験が邪魔されるのは納得出来ない。」
「うわ~。 勝手。 私以上に自己中。」
「人間には知る権利があるんだ。」
「物理学者に不倫相手を見つけだすことなんて出来んの?」
「もうあの車の錆びから新事実を発見した。
後は置き時計だけだ。
君があのホテルの従業員だったとする。
そこに物理学者が突然現れて、
妙子さんの写真を持って、この人を覚えていますか?
誰かと一緒にいませんでしたか?と言ったら、
それは面食らうだろう。」
「そりゃ。」
「しかし相手が刑事なら話はスムーズだ。」
「はあ?」
「僕と一緒にホテルに来てくれ。」
「いやいや。 なんで私が?」
「断るなら今後一切君とは―」
「喜んで。」
ホテルのラウンジの店員に話を聞くと、
妙子は男性と待ち合わせをして、
ケーキを注文し、更にローソクもないかと聞かれたとのこと。
その前にプレゼントを渡していたので誕生日だったよう。
「その男性は日本人じゃなかったんじゃありませんか?」
「はい。 お上手な日本語でしたが、
イントネーションが中国系の方だったような気がします。」
美砂に男性は誰だったのか調べるよう言う。
台湾料理店へ柳沢を案内した湯川。
柳沢は不倫相手に会わせるなんてと不機嫌そう。
「僕の友人に台湾の物理学者がいるんです。
その友人から台湾のこんな風習を聞いたことがあります。
台湾では置き時計を人に贈ることはタブーだと。」
置き時計を贈るは人の死を見届けるという意味の
言葉と発音が全く 同じなので縁起が悪いと。
そのことを知らなかった妙子はすぐに時計を引っ込め、
代わりにケーキを注文したと。
妙子は何故そんな男と?柳沢。
最初のきっかけは英会話教室での彼の妻と知り合った。
そして妙子がホテルで会っていた
ヤンという台湾人を紹介する湯川。
ヤンの弟は台湾リーグで活躍してるプロ野球選手だと。
「あなたの奥さんは不倫をしていた訳ではありません。
ヤンさんを通じて台湾のリーグがどういうところか?
日本人がそこでプレーするためには、
誰を通じてどんな話をすればいいのか?
そして台湾で生活するための準備を。
そういったことをヤンさんに相談されていたんです。
もし日本の球界でチャンスがなかったとしても、
台湾のリーグでもう一度プレー出来る道を用意してあげたい。
そして自分も一緒に台湾について行こうと、
そう心に決めてらっしゃったんです。」
「奥さんはホントに柳沢さんのことを
愛していらっしゃいました。
あの人には野球しかないから。
野球をやってる時が一番素敵だから、
なんとか現役を続けさせてあげたいと。
残念です。 妙子さんがお亡くなりになるなんて。
あの日の妙子さんが最後の姿になるなんて。」
そして妙子はあの日、実家に帰って疲れて眠ってしまった。
その時、運悪く違法電波にストーブが反応し、
眠ったまま命を落としたのだと。
柳沢は妙子の名前を呼びながら泣き崩れる。
今日は柳沢の入団テストの日。
宗田が球団のOBということで、テストを頼み込んだよう。
柳沢は妙子を思いマウンドへ。
そして渾身のスライダーを決めた。
「実験は成功だ。」
ニヤリとして満足そうな湯川。
妙子は台湾リーグのこと
隠さなくても良かったのでは?と思ったんだけど・・・
ちゃんと話してれば柳沢も誤解せずに済んだのに。
今回は湯川が美砂を振り回してる感があって、
なんか見てて爽快だったわ~(笑)
【ガリレオ】
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