子供たちとの新しいステージへ

2006年10月19日 | 風の旅人日乗
10月19日

さて、今晩は、KAZI(舵)2004年10月号に掲載された、サバニ帆漕レース2004「古来の海文化を子孫に伝える」の後半です。
(text by Compass3号)

古来の海文化を子孫に伝える
サバニ帆漕レース2004

文/西村一広
Text by Kazu Nishimura

(昨晩からの続き)

子供たちとの新しいステージへ

そして現代。サバニとその帆走技術は、子供たちの総合学習の題材として取り上げられるようになった。沖縄県の座間味中学校では、今年からサバニを操って海に出る授業を、総合学習の一環として始めた。祖先が伝えてきたサバニという海洋技術・文化を次の世代に伝えるのである。過酷な労働条件の問題と一緒くたにして、サバニの帆走技術まで途絶えさせることはないのである。改めるべきものは改めればいいのだし、残すべき文化や技術は残すべきなのだ。
その授業の一つの区切りとして、座間味中学の生徒たちが自分たちだけでチームを組んで、今年で5回目の開催になった座間味~那覇のサバニ帆漕(帆走しながら櫂で漕ぐ)レースに参加した。現代の中学生たちが、自分たちの祖先が乗っていたのと同じ舟、サバニ、を操って、自分達が暮らす島を出て、海を渡ったのだ。
風は途中で凪ぎてしまい、櫂を漕ぐことだけが舟を進める唯一の手段になったが、子供たちは暑さや、手に出来たマメ痛さに耐えて、その航海を無事やり遂げた。しかも、多くの大人のチームを尻目に、好成績でゴールラインを走り抜けた。
現代の子供たちに操られるサバニは、重いテーマのTVドラマから抜け出だして、とても現代的で溌剌としているように見えた。これからは、子供たちが助け合うことを覚えたり、夢や冒険心を育む舟として、サバニはその役目を背負っていくことになるのだろう。