2013年9月17日 サンフランシスコ2日め

2013年09月18日 | 風の旅人日乗
朝10時半、ピア27にあるメディアセンター。
レースオフィサーのイアン・マーレーの記者会見のあと、
歩いてピア23まで行き、2隻の到着を待つ。



ボクシングの試合と違って、
現チャンピオンが先に入場。

オラクルは、コードゼロを展開するための
バウスプリットを外している。
外せる構造なんだな。

続いて、エミレーツチームニュージーランドの2号艇、
<アオテアロア>が入場。
アオテアロアとは、
先住民であるマオリの人たちがあの島々のことをさすことば。
直訳すると、白く長い雲。

<アオテアロア>は
コードゼロ用のバウスプリットを外していない。
外せない構造なんだな。




なんだかね、ただ浮いている姿からすでに
ヨットじゃないな。
未来のセーリングマシン。
すでにバウとスターンで点滅しているLEDが、
”未来感”をさらにかき立て、ドキドキしてくる。
たくさんのこどもたちにみせたいなあ、ホント。



オイラもね、ただうっとりと、見とれてしまう。



さあて、分からないことだらけのAC72だけど、
自分の目で見られるところから、
勉強を始めるとしますか。

では、本日は、衆人環視のもと、
隠すことなく全貌をさらしている
ウイングから行きましょう。


まずはチームニュージーランドから。



これはね、強風用のウイングです。
昨日のブログを読んでいただければ分かりますが、
私は昨日、チームニュージーランドのシェッドで
彼らが持っている2枚のウイングを見比べ、
こちらが強風用、あちらが微風用と推理をしたのだけれど、
強風が予想される本日、選ばれたウイングは、
えへへ、おいらの推理通りのほう。



どこに違いがあるか。
面積の違いを見たわけではありません。
クラスルールでは、ウイングの面積は
260㎡以下、255㎡以上、とされていて、
その2%の違いなど、
ワタクシの目で見分けられるものではありません。
違いは、それ以外のところに
三つほどあるんです。
出し惜しみします。


そして本日初めてじっくり見る
オラクルのUSA17と、



そのウイング。



2隻のウイングを、
ピア23の先端と根元を行ったり来たりしながら見比べる。

エリアの分布が違うのはよく分かりますよね。

あと、2隻とも、
ウイングを結構後傾させているのが、目を引く。

ウイングのスペックは、
海面からの高さではなく、全長で規定されているので、
少しでも高さを稼ごうとすると直立させることになるが、
そうはなっていない。

艇のヘルムバランスなのかな。
それとも、
ジェット機の主翼が後傾しているのと同じ理由なのかな。

分からないことだらけのヨットだぞ。
分からなくて悔しいけど、面白い。
面白いけど、分からないのが悔しい。

分からないなりに本日見つけたことをひとつ、
このブログの読者の皆様にだけ紹介します。

ウイング前側のエレメント1のORACLEのロゴの後ろと、
後半部のエレメント2の前端との間に、
透明なフィルムを張った細長いセクションがあるでしょう?



あそこはねえ、縦方向に8分割されているんだけど、
それぞれが自分で勝手にパタパタ動くんですよ。
つまり、セーリング中は
あの部分が風下側に開いて、
エレメント1とエレメント2の間に風の通り道を
積極的に作る。

それを見て思い出したのは、
着陸前のボーイング747型機のフラップのせり出し方。



主翼との間も含め、
それぞれにすごく大きな段差を付けて
隙間をわざと空けているでしょ?



これと同じことを狙っているのかな?

ソフトセールで言えば、
ジブとメインの間のスロットが
2枚のセール(翼)の揚抗比を相乗的に高めるという、あれ?

防衛チーム艇の開発には
ボーイング社からもスタッフが投入されているというし、な。

ニュージーランドのウイングには、このパーツは見られない。




オラクルがチームニュージーランドに追いかけられて
こんな奥まで入ってきた!

のではなく、
クルーがピア27に集まった観衆の前で紹介され、
頑張って戦って来いよセレモニーが行なわれている間、
2隻はこんなふうに、ピア27と23の間の水面で
ブイに係留されて待っています。

本日はマリーナ・グリーンの前の水辺に行って
待機したけど、風が上がり過ぎて、
午後1時31分に、延期が決定。

明日以降は、天気は通常に戻り、
風も弱くなる傾向だという。

風が弱くなれば、
2隻のパフォーマンスが
これまでのレース通りであると仮定すれば、
エミレーツチームニュージーランドに利がある。

オラクルチームUSAが、
どこまで巻き返してくるか、興味深いところ。

第9レース、第10レースを見る限り、
オラクルのクローズホールドは
それまでとは別物のように良くなり、
タックやジャイブも、
チームニュージーランドにほとんど引けを取らなくなってきた。

明日も楽しみ。