坂の街サンフランシスコで開催されている
第34回アメリカズカップの第14レースが
翌日に延期されることが決まり、
観戦していたフォートメイスンの丘から、
街中のピア27にあるメディアセンターには行かず、
そのまま宿に戻る。
部屋で、しばし、ぼんやりと考えごと。
今回、サンフランシスコに来るか来ないか、結構悩んだけど、
最終的には、いい判断をしたね、と自分を誉める。
いろんなことを犠牲にしたけど、
価値のある、いい一週間だったと、
今は思える。
さてさてところで、そういうことで、
この夕方から先、予定のない時間ができた。
夕食の場所を探すことも含め、
その先の3時間くらいを、
今回初めて、自分の自由時間にすることにする。
サンフランシスコには、
個人的にいろいろと思い出深い場所もあり、
その思い出をたどって、
あっちやこっちに行ってみたい所があるし、
訪ねてみたい人もいる。
でも、3時間では、どれも、ほぼ無理。
どーしようかなあ?
地図を見てみると、
宿から歩いて30分強くらいのところに、
チャイナタウン。
そうだな、
カッコ付けて、ユニオンスクエアとかに行ってオタオタするよりも、
英語の中を歩いていると突然のように、
中国語が大声で飛び交い始める、あの街に行って、
あの、メチャクチャな混沌の中を、ぼんやり歩く、ってのも、いいかもよ。
未来から来たような新しいヨットレースを、
丸1週間ものあいだ観続けて、
こちらの脳みそも、整理できなくなっているところだし、
混沌としているあそこに行って、もっと脳みそを撹拌したら、
もしかしたら反作用で、見えてくるものがあるかもしれない。
ということで、本日の1人夕食は、
チャイナタウンへ。
サンフランシスコのチャイナタウンは、
アメリカからは全くかけ離れている場所のように見えるのに、
実は最もアメリカらしい場所なのかもしれないなあ、
なんてことを考えつつ、人波に押されるままに歩いていく。
うるさいくらいの大声で中国語で会話をする人たち。
周囲に気を付けながらだけど、ペッペとタンを吐く男たち。
人のことをグイと肘で押しのける女のひとたち(時々、ワーオ、すごい美人)。
でもね、自分でもビックリだけど、なぜか心地悪くない。
中国語は話せないしヒアリングできないのに、
そこの空気に溶け込んで普通にしている自分に、ビックリ。
自分は、アジア人なんだなあ、なんて、
当たり前のことに、改めて気がつく。
地元の、チャイナタウンで商売を営んでいると思われる
中国人の人たちが、楽しそうな掛け合いをしながら
出たり入ったりしている食堂を見つけ、
そこに、恐る恐る、入る。
外観、かなり汚い。
でも、テーブルと椅子が、とてもきれいに拭かれていて、清潔そう。
そこの食堂の、
バリバリに働きまくるウエイトレス(でいいのかな?)のおばさんが、
最初はすんごく怖かったけど、
すんごく無愛想だったけど、
そのうちすんごく親切にしてくれるようになり、
おいらはここで、
この1週間のサンフランシスコ滞在の中で、
文句なしに一番美味しい夕食をいただくことになった。
食後に、またぼんやり考えごとをしていると、
その怖いおばさんが持ってきてくれた熱いお茶は、
すごく丁寧に煎れられていて、とても美味しかった。
長居し過ぎたかなと思い、
自分で勝手にソワソワして
「チェックを」と言おうとした矢先に、
新しい熱いお茶と一緒に持ってきてくれた中国菓子が、
本当に、マジに、美味しかった。
ありがとう、(多分おいらよりもずいぶん歳下の、きれいな)おばさま。
でも、ところで、あんなにお茶を度々持ってきてくれたのは、
早く帰ってよ、ってサインだったのかな?
そんなこんながあったけど、
おいらの今回のサンフランシスコ最後の一日は、
おかげさまで、大変幸せのまま、完璧に完遂しました。