今から30年前のとなる1994年7月2日、米国ハワイ州で行われた試合結果です。
ジュニアフェザー級戦(10回戦/現スーパーバンタム級):
辰吉 丈一郎(大阪帝拳)KO3回2分47秒 ホセフィーノ スアレス(メキシコ)
*この試合が行われた前年となる1993年7月に、宿敵ビクトル ラバナレス(メキシコ)を破り暫定ながらもWBCバンタム級王座に返り咲いた辰吉。しかしその後(確か1993年の9月頃)、左目の網膜剝離が発覚し長期ブランクを余儀なくされていました。
当時の日本では、網膜剝離になった選手は即引退というルールが敷かれていたため、辰吉はルール改正を訴えると同時に、海外に活躍の場を求めていました。そのようにリング外でも戦いを強いされていた辰吉でしたが、何はともあれ太平洋のど真ん中でのリング復帰戦にたどり着いています。
(太平洋のど真ん中(ハワイ)で行われた辰吉の復帰戦)/ Photo: YouTube
スアレスはこの年の4月に、薬師寺 保栄(松田)の持つWBCバンタム級王座に挑戦する等、名の知れた選手。18勝(12KO)10敗1引き分けと、世界ランカーとしては黒星の多い選手です。しかしそれまでに対戦してきた選手には、後のWBCスーパーフェザー級王者ガブリエル ルエラス(米)や、3階級制覇を達成した暴れ者ジョニー タピア(米)、そして軽量級から中量級にかけ一時代を築いたマルコ アントニオ バレラ(メキシコ)等が含まれています。また、1992年8月には、この年(1994年)の5月にWBCスーパーフライ級王者として来日したホセ ルイス ブエノ(メキシコ)にも勝利を収めています。敗戦は多いものの、その中から実力を蓄えてきた実戦派と言っていいでしょう。
スピードは無いものの、中々のパンチ力を持つスアレス。春先には敗れはしたものの薬師寺を相手に、それなりの善戦を見せました。実力的には中堅の世界ランカーと言ったところでしょうか。
この試合の注目点は、約1年ぶりの試合となる辰吉が初の海外の試合で、薬師寺と対戦したスアレスにどのような試合を見せるかに絞られていました。
期待と不安が交錯する中、試合開始のゴングが打ち鳴らされました。この日の辰吉は、バンタム級とジュニアフェザー級の中間だった契約ウェートを下回る体重で計量に臨んでおり、体調は万全に近い状態。それもあってか、両者のスピードの差は歴然としていました。
持ち前の左右、そして上下のコンビネーションでスアレスを圧倒していく辰吉。元々追い足の鈍いメキシカンは、辰吉の軽快なフットワークについていくことが出来ません。相も変わらず気になるのが、辰吉の左ガードの低さ。スローではありますが、変則的な不用意にパンチを貰う場面もありました。しかし持ち前のバランスの良さとスピードで後続打を遮断していきます。
一年ぶりの試合にも関わらず、快調に飛ばしていく辰吉。まずは2回、左フックで先制のダウンを奪います。続く3回も「浪速のジョー」の勢いは止まることなく、メキシカンを再びキャンバスに送ります。「これで終わりかな?」と思いきや、何とか立ち上がったスアレスでしたが長続きせず。最後は辰吉の伝家の宝刀であるボディーでテンカウントを聞くことになりました。
1年ぶりの試合としては申し分ない試合を見せた辰吉。しかし2ラウンドに、ダウンした相手にパンチを見舞ったり、3回には相手を投げ飛ばしたりするなど、いただけない場面もありました。
(再起戦としては申し分のないパフォーマンスを見せた辰吉)/ Photo: YouTube
何はともあれ、無事にリング復帰を果たした辰吉。辰吉が標的としているWBC王座は、この月の最終日に再び薬師寺と前王者辺 丁一(韓国)の間で争われる事となります。