帰ったら、和音君がソファーで寝てました!
久しぶりにさわやかな空気に包まれた火曜日、今日から下期のスタートだ。上期は空前の業績アップで、笑いが止まらない状態だった。下期も大型機器の出荷が相次ぎ、引き続き好調な販売予想を立てている。この中には私が苦労して受注にこぎつけた大型製品も億を超える売り上げでカウントされている筈だ。
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そんな中、人事担当から中途採用のメールが届いた。ここ10年、中途採用は無かったが、どういうことだろう。採用者は30歳前の若手で7人だった。<o:p></o:p>
ちょうどK常務が顔を見せたので、どういうことか尋ねたら、これから大型機器の更新が見込まれ、製造技術を維持・継承してゆくのに中堅社員が必要なので採用に踏み切った、とのことだった。<o:p></o:p>
要するに団塊の世代の退職と、リストラで製造スキルが消えつつある現在、それを立て直すために中堅社員を育成する、ということらしい。今のうちに何とか手を打っておきたいというのが真相らしいが、さてさて、どうなることだろうか! <o:p></o:p>
メーカーの技術スキルは、見よう見まねで覚えるものと、失敗を教訓として体で覚えるものがある。要するに、書き物を読んでも分からないことが多いし、書きもの自体もどこに保管しているのか分からない。熟練した先輩がいれば、過去の経験を語ってくれるが、正直言ってそのような人は皆無になっている。いまさら社員を入れて技術を養成しようとしても、昔の技術はとっくに無くなっているのだ。<o:p></o:p>
私が若いころ、大型機器は新技術のラッシュで次から次に新製品を排出してきた。高度成長期に合わせて技術も進歩してきたのだ。設計者の私は、製造現場と作り方、考え方などを話し合って、団結・協力しあって開発してきた。もちろん失敗も多々あって、製造職場に1升瓶を持って誤りに行ったこともあった。<o:p></o:p>
効率優先の現代において、設計と製造が協力し合って新技術を検討し合って創出してゆく、なんてことは考えられない。製造は工数増を伴う作業は嫌がるし、標準化された作業しかしないように訓練されているのだから。製造がこのような状態だと、設計的にも制限される。複雑な手作業を伴う設計は出来ないのだ。<o:p></o:p>
こんなことを考えていたら昼休みのチャイムが鳴った。お魚定食に並んでいたら、「Kさん」とどこか懐かしい声がする。ふと横を見ると、同世代で早期退職されたやはりK君がにこにこして並んでいた。そういえば、忙しいので下期からOB諸氏にパートに来てもらうように働きかけていると聞いていた。<o:p></o:p>
10年ぶりにあったK君、幾分か太ったようだが元気そうだった。本人にしてみれば無理やりに辞めさせられた想いが強いであろうが、月日を超えて会社に愛着を持てるようになったのであろうか。嬉しかった。 <o:p></o:p>