Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

染錦 三方割 萩鳥文 デミタスカップ(2セット)

2021年01月26日 13時51分38秒 | 古伊万里

 今日も、昨日に引き続き、デミタスカップの紹介です。

 今日紹介するデミタスカップも、昨日紹介したデミタスカップ同様、平成元年に東京・平和島の「全国古民具骨董まつり」会場から連れ帰ったものです。実は、昨日紹介したデミタスカップを買った日と同じ日に、同じ会場から連れ帰ったものです。ただ、買ってきたお店はそれぞれ別なお店からでしたけれど、、、。

 昨日連れ帰ったデミタスカップを買った後、なお、広い会場内を物色していましたら、また、デミタスカップに巡り会ったんです。今度は、同じようなものが2組陳列されているではないですか!

 ただ、手にとってよく観察てみますと、1組のほうは、カップとソーサーの文様に若干の差があることに気付きました。でも、ちょっと見には分からないですから、「この程度の差違は許されるか!」と思い、2組同時に連れ帰ることを決意します。その頃は、デミタスカップを発見した場合、なるべく買うことにしていたからでもあります。

 そこで、店主に、1組には文様に差違があることを指摘し、若干の値引きをさせ、2組同時に連れ帰ったわけです。

 

 

<セット①>

(カップとソーサーの文様が一致)

 

カップ&ソーサーの立面

 

 

カップをソーサーから外したところ

 

 

カップをソーサーから外し、それぞれを伏せたところ

 

 

カップの立面(1)

 

 

カップの立面(2)

カップの立面(1)を左に45度回転させた面

 

 

カップの見込み面

 

 

カップの底面(1)

 

 

カップの底面(2)

カップの底面(1)を左に45度回転させた面

 

 

ソーサーの表面

 

 

ソーサーの裏面

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代:   江戸時代中期

サ イ  ズ: カップ ……口径;5.8cm  高さ;3.5cm  底径;2.6cm

         ソーサー…口径;9.6cm  高さ;2.2cm  底径;3.9cm

 

 

 

<セット②>

(カップとソーサーの文様が不一致)

 カップに描かれた植物文様が萩(?)であるのに対し、ソーサーに描かれた植物文様が羊歯(?)となっています。

 

カップ&ソーサーの立面

 

 

カップをソーサーから外したところ

 

 

カップをソーサーから外し、それぞれを伏せたところ

 

 

カップの立面(1)

 

 

カップの立面(2)

カップの立面(1)を左に45度回転させた面

 

 

カップの見込み面

 

 

カップの底面(1)

 

 

カップの底面(2)

カップの底面(1)を左に45度回転させた面

 

 

ソーサーの表面

 

 

ソーサーの裏面

 

生 産  地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期

サ イ ズ : カップ ……口径;5.8cm  高さ;3.5cm  底径;2.6cm

        ソーサー…口径;9.9cm  高さ;1.8cm  底径;5.2cm 


染錦 三方割 萩文 デミタスカップセット

2021年01月25日 11時00分38秒 | 古伊万里

 今回は、今月の8日、23日に続いての3個目の「カップ&ソーサー」の「染錦 三方割 萩文 デミタスカップセット」の紹介です。

 これは、平成元年に、東京・平和島の「全国古民具骨董まつり」会場から連れ帰ったものです。

 この時は、もう、「カップ&ソーサー」を買うのも3個目でしたから、カップとソーサーの文様が同じでなければならないことは承知していました。そして、カップもソーサーも、それぞれ、器面を三分割して文様が描かれていることが多いことも承知していました。

 しかし、よく見ると、この「カップ&ソーサー」の場合は、ちょっと様子が違うことに気付きました(~_~;)

 カップとソーサーに描かれた文様は同じなんですが、ソーサーには三分割して文様が描かれているのに対し、カップには三分割ではなく二分割して文様が描かれていることに気付いたんです。

 でも、この場合、カップが小さいですから、三分割して文様を描いてはゴチャゴチャするので、二分割して描いたのだろうと思ったわけです。ソーサーは三分割、カップは二分割で文様が描かれていますが、これはこれで文様は揃っているのだろうと思って連れ帰ったわけです(~_~;)

 

 

カップ&ソーサーの立面

 

 

カップをソーサーから外したところ

 

 

カップをソーサーから外し、それぞれ伏せたところ

 

 

カップの立面(1)

 

 

カップの立面(2)

カップの立面(1)を左に90度回転させた面

 

 

カップの見込み面

 

 

カップの底面(1)

 

 

カップの底面(2)

カップの底面(1)を左に90度回転させた面

 

 

ソーサーの表面

 

 

ソーサーの裏面

 

 

生  産地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期

サ   イズ: カップ ……口径;5.6~5.8cm 高さ;3.8cm  底径;2.4cm

      ソーサー…口径;9.7cm   高さ;2.2cm  底径;4.9cm


色絵 飾台に盛花文 小皿

2021年01月24日 14時07分31秒 | 古伊万里

 ここのところ、コロナのため、先週の日曜日は、毎月行っている骨董市と古美術交換会が休みのために行けず、本日の日曜日も、町内の老人会のカラオケもお休みのために参加出来ません。

 それで、土・日・祝祭日もなしに、連日、せっせと古伊万里の紹介に努めているところです(^_^)

 そんなことで、今日は日曜日にもかかわらず、「色絵 飾台に盛花文 小皿」の紹介です。

 これは、平成元年に東京の古美術店から買ってきました。

 

 

表面

 

 見込み面いっぱいに、花を盛った花瓶を飾台に乗せた文様を描いていますが、その周辺部には、ぐるりと陽刻が施されています。陽刻は、山水文、人物文、家屋文のように思われます。

 

 

山水文(?)が描かれていると思われる陽刻部分

 

 

人物が橋を渡っているところ(?)が描かれていると思われる陽刻部分

 

 

家屋(?)が描かれていると思われる陽刻部分

 

 

裏面

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ  イズ : 口径;15.2cm  高さ;3.3cm  底径;6.9cm

 

 

 なお、この小皿につきましては、既に、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中でも紹介していますので、まず、その紹介文を、次に、再度、引用いたします。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー111 古九谷様式(以前:柿右衛門様式に分類)色絵飾台に盛花文小皿 (平成19年7月1日登載)

 

 この皿は、かなり写実的な構図法である。

 古九谷様式も柿右衛門様式も、当初は、そのお手本とした景徳鎮民窯の南京赤絵にならい、窓絵の構図法と地文埋めつぶしの構図法という二つの構図法からスタートしている。

 窓絵の構図法は、器の表面に枠取りを設け、その枠内に一幅の絵画のような文様を描き込み、枠外は細かな幾何学文様で埋めていく方法で、地文埋めつぶしの構図法は、器の表面に主題の文様を描き、それ以外の余白全部を幾何学文様で埋め尽していく方法である。
 その後、柿右衛門様式の方では、この二大構図法は減退していき、完成期頃からは余白が強調されるようになってくる。

 このような構図法の流れから見ると、この皿は、余白をたっぷりととっているので、柿右衛門様式の盛期以降の作品ということになろう。

 でも、これまでの見解によれば、この手のものは古九谷様式に分類されるのではないかと思われる。
 柿右衛門様式と古九谷様式とを対比した場合、古九谷様式の方が先行し、古九谷様式の後に柿右衛門様式が登場してきたと考えられてきているので、この皿のように古格のあるものは、柿右衛門様式よりも古く分類されてきているからである。

 ところで、最近、私は、柿右衛門様式と古九谷様式とは、並行して作られてきたのではないだろうかと思うようになってきている。
 柿右衛門様式が輸出用、古九谷様式が国内需要用として作られてきたのではないかと、、、。

 その特徴としては、柿右衛門様式の場合は、失透した乳白素地の上に赤が多用されているのに対し、古九谷様式の場合は、多種多様な素地の上に赤が少量使われているにすぎないと言えるのではないかと思う。

 そのような見解に立てば、この皿は、失透した乳白素地の上に赤を多用しているので柿右衛門様式に分類されることになる。また、素地には指跡と思われるようなものも見られるところから、生掛けと思われるので、かなり早い頃に作られたのではないかと思っている。

 なお、この皿の見込み周辺部には、ぐるりと家屋や人物や山水文が細かく陽刻されており、かなり丁寧に作られていることを付記しておきたい。

 「柿右衛門様式は輸出用、古九谷様式は国内用」という見解には、なお問題を含んでいるので、現在は少数意見と思われるが、最近の私の心境としては、この見解を支持したいので、当面、この皿を柿右衛門様式に分類してみたところである。

 ところで、以上の説明の中での「柿右衛門様式は輸出用、古九谷様式は国内用」という場合の「古九谷様式」というのは、「典型的な古九谷様式」のことであることを付言しておきたい。
 最初期の色絵は、まだ失透した白磁素地が完成していないため、赤が映えないこともあり、赤を控えめにして寒色系を主体にした色絵であり、その点では、それは古九谷様式であって、その意味では、古九谷様式が先行するわけである。
 問題は、白磁素地が安定して作られるようになって以後のことである。その時点以後について、私は、「柿右衛門様式は輸出用、古九谷様式は国内用」として、並行して作られたのではないかと思うわけである。

 

江戸時代前期     口径:15.2cm  高台径:6.9cm

 

追記(平成20年12月10日)

 この文章を書いた平成19年6月の時点では、あえて、この小皿の分類を「柿右衛門様式」に分類したが、これまでの分類法からすると、やはり、「古九谷様式」に分類したほうが座りがいいので、「古九谷様式」に分類し直すことにする。

 

 

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*古伊万里バカ日誌49 古伊万里との対話(飾台に盛花文の小皿)(平成19年6月筆)

登場人物
  主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
  花 子 (古九谷様式「以前:柿右衛門様式に分類」)色絵飾台に盛花文小皿)

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、今回もどの器と対話をしようかと迷っているようである。
 しかし、ほどなく、いつものように、主人の所に入ってきた古い順の物と対話をすることを決意し、押入れ帳をひもとき、押入れから一枚の小皿を引っ張り出してきては対話をはじめた。

 

主人: いや~、花子とも暫くぶりだな!

花子: そうですね。暫くぶりですね。と言いましても、「暫くぶりだな!」はご主人様の口癖のようになってしまいましたね。

主人: そうなんだ。ここのところ、我が家に早く来た順に出てもらっているので、「暫くぶりだな!」になってしまうんだよ。
 もっとも、最近では、お前のような名品が我が家に入って来なくなったので(ミエミエのお世辞タップリ!)、最近我が家に来た物達とは対話をする気になれないんだ。それで、ついつい、我が家に早くにやってきた物達と対話をしがちなこともその原因ではあるけれどね・・・・・。
 ところで、お前は、押入れ帳によると、平成元年に我が家に来ているな。当時は、お前のような物の産地ははっきりしていなかったことを思い出すよ。
 私は、お前を東京のお店から買ってきたんだけど、東京でも、お前のような物の産地の表示はいろいろだった。「伊万里」としてみたり、「九谷」としてみたり、「姫谷」としてみたり、或いは「平戸」としてみたり、中には、良心的なお店(?)では「不明」とされていた。そうそう、「中国」と表示している所もあったな。
 お前を売っていたお店はなかなか古伊万里に明るいお店だったので「古伊万里」と表示していた。私も、消去法から、お前のような物の産地は「伊万里」にちがいないと思い、「伊万里」として買ってきたところだ。

花子: 当時は、古九谷の産地が伊万里だということは確定していなかったんですか。

主人: 学術的には、古九谷の産地は伊万里だということは強く支持されてきていたようだけど、現実の、末端の骨董の世界までは十分に浸透していなかったように思えるね。いったん、「常識」に近いところまでに固まってしまった概念は、そう簡単には覆らないわけだ。どうもね、半信半疑というか、モヤモヤとした感じだったな。伊万里の窯跡の発掘調査と九谷の窯跡の発掘調査が進展し、その調査結果から、古九谷の産地は伊万里だということは明らかになってきてはいたんだが、一般にはなかなか受け入れてはもらえなかったようだね。
 そうした中、平成3年に「古九谷の実証的見方」(河島達郎・小木一良共著 創樹社美術出版)という本が発刊された。これは、主にこれまでに古九谷書に掲載されていた器物を放射化分析し、それによって微量元素類を測定して産地を確定するという方法を基にした結果を取りまとめた本なんだ。この本によって、古九谷の産地問題は結論を得たというところかな。ダメ押しされたというところだろう。

花子: でも、私の出身地が九谷ではないとしても、伊万里以外の地である可能性もあるわけでしょう?

主人: それはそうだね。でも、その可能性はほとんどないだろうね。
 江戸前期の我が国の磁器窯としては、伊万里諸窯の他に九谷窯と姫谷窯とがあったわけだが、幸い、前記の「古九谷の実証的見方」という本には、「九谷窯、姫谷窯、伊万里諸窯の規模対比」という項目があるんだ。その項目での記述によると、九谷窯、姫谷窯の規模は極めて小さく、伊万里諸窯の1パーセントにも満たず、現存数はほとんどないというんだ。それにもかかわらず、お前のような物は結構見かけるんだよね。現存数が多いわけだ。そういうところから考えて、私は、お前の出身地は伊万里であって、それ以外の地ではないと思っているわけだよ。

花子: わかりました。出身地に自信が持てて嬉しいです。

 

追記(平成20年12月10日)

 この文章を書いた平成19年6月の時点では、あえて、この小皿の分類を「柿右衛門様式」に分類したが、これまでの分類法からすると、やはり、「古九谷様式」に分類したほうが座りがいいので、「古九谷様式」に分類し直すことにする。

 

 

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 ところで、上の「古伊万里への誘い」の中の文章を読んでも分かりますように、或る器物を、「柿右衛門様式」と分類するのか、「古九谷様式」と分類するのかには、なかなか難しいものがあります(><)

 私自身も、或る時は「柿右衛門様式」に分類したり、また、或る時は「古九谷様式」に分類したりしています(~_~;) 定見がありません(><)

 思うに、かつては、「古伊万里」は「古伊万里」であり、「柿右衛門」は「柿右衛門」であり、はたまた、「古九谷」は「古九谷」であって、三者は、それぞれ別物として扱われてきたことに原因があります。

 「古伊万里」の研究が進むにつれ、「柿右衛門」は「柿右衛門様式」として、古伊万里の一様式となって「古伊万里」の中に取り込まれ、はたまた、「古九谷」も「古九谷様式」として、これまた古伊万里の一様式となって「古伊万里」の中に取り込まれるに至りました。

 その過程の中で、混乱を避けるためもあり、「古伊万里」を、「古伊万里様式」、「柿右衛門様式」、「古九谷様式」というように、様式区分をしてきたのではないかと思います。

 しかし、「柿右衛門」も「古九谷」も、すっかり「古伊万里」の中に取り込まれて定着してきますと、今度は、「古伊万里様式」、「柿右衛門様式」、「古九谷様式」というような様式区分が逆に混乱を招くようになってきたように思うんです。

 それで、私は、年の改まった今年から、原則として、様式区分を止めることにいたしました。


染錦 三方割 花桶文 デミタスカップセット

2021年01月23日 12時37分48秒 | 古伊万里

 今回は、「染錦 三方割 花桶文 デミタスカップセット」の紹介です。

 以前にも(令和3年1月8日にも)、「染錦 桜文 デミタスカップセット」を紹介しましたが、そのデミタスカップを買った頃は、私は無知だったものですから、カップとソーサーがセットになって使用されていたことを知らなかったため、以前に紹介した「染錦 桜文 デミタスカップセット」のカップとソーサーの文様には微妙な違いがあることに気付かずに買ってきてしまったことも紹介したところです(~_~;)

 その後、この手のデミタスカップを買う際には、カップとソーサーの文様が一致するものを買うべきものと心に決めていたところですが、やっと、それに適合するものに出会いましたので、さっそく買ってきたものが、この「染錦 三方割 花桶文 デミタスカップセット」です(^-^*)

 

 

立面

 

 

カップをソーサーから外したところ

ソーサーの面を三分割して花桶文等を描いています。

この手のものは、三分割して文様を描くことが多いようです。

 

 

カップをソーサーから外し、それぞれ裏返ししたところ

 

 

カップの立面(1)

カップの面も三分割して花桶文等を描いています。

 

 

 

カップの立面(1)を右に45度回転させた面

 

 

カップの見込み面

 

 

カップの底面(1)

 

 

カップの底面(1)を右に45度回転させた面

 

 

ソーサーの表面

 

 

ソーサーの裏面

 

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期

サ イ ズ : カ ッ プ  ……口径;5.8 cm 高さ;3.6cm 底径;2.7cm

        ソーサー……口径;10.2cm 高さ;1.2cm 底径;4.6cm


色絵 桜文 小皿(一対)

2021年01月22日 15時26分45秒 | 古伊万里

 今回は、「色絵 桜文 小皿(一対)」の紹介です。

 

 

表面(一対)

 

 

裏面(一対)

 

 

表面(代表の1枚)

 

 

裏面(代表の1枚)

 

 

生 産  地: 肥前・有田

製作年代: 江戸時代中期

サ イ ズ : 口径;15.7cm  高さ;3.3cm  底径;7.2cm

 

 

 この小皿につきましても、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に紹介しておりますので、次に、その紹介文を引用し、この小皿の紹介に代えさせていただきます。

 

 

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        <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー85 古伊万里様式色絵桜文小皿  (平成17年4月1日登載)

 

 このお皿には、いろいろと感心させられたり、びっくりさせられたりする。

 まず、この赤の色に驚かされる。古九谷様式の渋みのある重い赤でもなく、柿右衛門様式の明るい軽快な赤でもなく、後期の派手なペンキ赤でもない。むしろ、それらを全部混ぜ合わせたような赤である。それでいて、強烈なのである。外周の全面を塗らないで1/3 ぐらいを残してあるので余計にそう感じられるのだろうか。そうであるとするなら、なかなかの演出だ!

 そして、赤の中に描かれているものにも驚かされる。私は、一瞬、唐辛子が描かれているのかと思ってしまった。赤が唐辛子みたいな色なので、目の錯覚でそう見えたのだ。よく見ると、どうやら桜の葉っぱが描いてあるらしい。このお皿の中心が桜の花だから、周りに葉っぱを描けばちょうど合う。よ~く考えれば、もっともであり、驚くにはあたらないのである。

 それに、中心に桜の花を抽象化して描き、外周には葉っぱと花を散らし、口縁は輪花にしている。全体として見れば、なるほど、桜を意識して作ってるんだなと感心する。

 ところで、このお皿は、口縁から中心に向かってだんだん厚くして作られているので、見た目よりも手取りは重くなっている。また、高台も高く削り出されていて、けっこうそこそこの貫禄を感じさせる。 

江戸時代中期    口径:15.7cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌25 古伊万里との対話(サクラ文の小皿)(平成17年3月筆)

登場人物
 主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
 サクラ (古伊万里様式色絵桜文小皿)

口径:15.7cm (裏面)

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 主人は、今回のアップが4月1日であることに思いをいたし、4月ならば何をおいても「桜」であろうと考えたようである。
 しかし、そうはいっても、主人のところはなにせ貧庫! 首尾よく「桜」を取り出せるだろうか。

 

主人:「桜」を描いた古伊万里なんか、いくらでもあると思ってたが、実際に捜してみると苦労したね。幔幕を張って花見でもしているところを描いた大皿でもあれば文句なしなんだが、あいにくと、そのようなものは持合せていなかったのでね。
 改めて見てみると、実際には、「梅」を描いたものが多いね。「松・竹・梅」との関係で多いのだろう。それで、これは「桜」かなと思ってよく見ると「梅」みたいに見えるしね。「梅」と「桜」の違いは、意外に難しいよ。ちょっと苦労したな。結局はお前に出てもらうことにしたんだ。お前はどうやら「桜」に見えるようだし、お前を見れば、皆さん「桜」を思い浮かべてくれるだろうよ。

サクラ:あらっ、それじゃ私は、お客を騙す「サクラ」みたいなものじゃないですか!

主人:まあ、そういうな。「桜」を連想させる「サクラ」なんだ。立派な「サクラ」だろう。(どうも主人は、自分で何を言ってるのかわからなくなったようだ!)
 ところで、お前は変わってるね~。中心に「桜」の花を抽象化して描いたかと思うと、周辺には葉っぱが具象化して描いてある。それも、葉っぱと思って見ないと葉っぱとは思えない。一見すると「唐辛子」でも描いてあるのかと思うよ。

サクラ:「唐辛子」はないでしょう! それじゃ、めちゃくちゃになってしまいますよ。

主人:いやいや、そうでもないな。伊万里の場合は、「色」なんか自由に選択してるものね。必ずしも現実の「色」を使っているわけではない。例えば、木の幹の色だって、紫色にしたり黄色にしたりと、自由自在さ。それに、物の取り合わせだって、あまり関連なく行っているね。だから、「桜」に「唐辛子」を取り合わせたって、ひとつもおかしくないのさ。

サクラ:そんなものですか。
 でも、どうしてそんなに自由な発想で作られたんでしょうね。陶工さん達の感性が素晴らしかったからでしょうか。

主人:まあ、そうかもしれないな。
 ところで、今まで、普通に「陶工」と言ってるんだけどね、理屈っぽいようだけど、最近、私は、「陶工」というのはどのような立場の者を言うのかな~と考えてるんだよ。
 「陶工」は、あくまでも雇用された一(いち)職人にすぎないと思うんだよね。そのような立場の者にそれ程のリーダーシップがあったとは思えないんだよ。今でこそ、「陶工」というと独立した作家みたいなイメージを抱くけどね。私は、むしろ、窯の経営にたずさわっていた者やそこのブレーンの感性、また、その窯の製品を取次ぐ商人の感性が製品製作に大きく左右していたと思うんだよ。
 彼等は市場に敏感で、お客の要求などをいち早く察知し、それを「陶工」(職人)に伝えて作らせたのではないかと思うんだよね。
 彼等は、また、マーケッティングにも優れていたし、優秀なデザイナーでもあったのではないかと思うんだよね。

サクラ:その辺は、いまのところはっきりしておりませんね。

主人:そうなんだ。チラチラは書かれているが、本格的に書かれているものは見ないな。「美」とはあまり関係がないから、本格的に取り組む者がいないのかな。その辺を整理してもらえると、誰が古伊万里の「美」の面での中心人物だったのかがわかるんだけどな~。もっとも、私の勉強不足で、もう既にそのようなものがちゃんと整理されているのかもしれないけれど・・・・・。

サクラ:そうですね。でも、それは地味な作業になりますね。それに、そのような作業をしてみようなどと思うお方も少ないのではないでしょうか。だって、ご主人様くらいかもしれませんよ、そんなことに関心を寄せられる方は。作業の割には報われないことになりますもの。

主人:そうかな~。
 それにね、実際の生産工程の現場でだって、たった一人の人間がすべてを行っていたわけではないと思うんだよね。ヨーロッパなんかそうだろう。例えば、ミケランジェロなんか、いわば「ミケランジェロ工房」みたいなのを作って、そこの親方みたいな感じで作業しているだろう。日本だって同じだと思うんだよね。たった一人の人間の能力には限りがあるもの。
 これからは、そういう視点からも光が当てられるべきだと思うんだよ。「工芸」の場合は、ちょっと、「絵画」の場合なんかとは違うと思うんだよね。

サクラ:いや~、今日は我らが「親方様」は大いに論じますね~~。だいぶ、お花見のお酒が利いてきたのでしょうか?

主人:そうかもしれないな。どうだサクラ、この際、「サクラ」になって、その辺の検討をリードしては!

 

追記:最近、「余白の美 酒井田柿右衛門」という本が出ました(14代酒井田柿右衛門著 集英社 2004年11月22日第1刷発行 798円)。
 この本の中に、柿右衛門窯「工房」のことが書かれています。
 実際に生産に携わっている方が書いたものですので、大変に参考になります。
 いろんな技術を持つ職人の存在、それらを集約していく者の存在等が書かれています。このようなことは、今まで、あまり書かれていなかったのではないでしょうか。
 上記の「古伊万里との対話(サクラ文の小皿)」を書いた後に、偶然、この本を読みました。タイムリーにも、上記の主人の抱いているような疑問に相当程度答えている部分があることを発見しました。