Dr.K の日記

日々の出来事を中心に、時々、好きな古伊万里について語ります。

色絵 丸文 小皿

2021年01月28日 12時22分31秒 | 古伊万里

 今回は、「色絵 丸文 小皿」の紹介です。

 これは、平成元年に、東京の古美術店から買ってきたものです。

 当時は、それまで「古九谷」と言われてきたものが、実は有田産であったらしいという見解が浸透してきて、古美術界は混乱し、この手の物は、「いったい、何処の生まれなの!」ということになり、国籍不明の存在となってきていました(~_~;)

 それで、これまで「古九谷」と言われてきたものが、随分と値崩れをおこしてきたわけです。

 私は、「古九谷」は有田産であることを信じていましたので、古伊万里好き(=有田産好き)としては、これを絶好の機会と捉え、この手の物を出来るだけ買うことにしたわけです。

 しかし、結果は、貧乏コレクターの悲しさ、それほどの数は集まりませんでした(><)

 というのも、「古九谷」が値崩れしたといっても、暴落はしなかったからです。この小皿にしたって、流石に、それまでの「古九谷」ほどの値段ではありませんでしたが、大傷があるにもかかわらず、今から考えたら、びっくりするほどの値段だったんです(~_~;)

 

表面

 

 

表面の上部分の拡大

 

 

表面の下部分の拡大

 

 

裏面

 

 

裏面の上部分の拡大

 

 

裏面の下部分の拡大

 

 

生 産 地 : 肥前・有田

製作年代: 江戸時代前期

サ  イズ : 口径;15.2cm  高さ;3.0~3.3cm  底径;8.8cm

 

 

 なお、この小皿につきましては、既に、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中でも紹介していますので、次に、その紹介文も再度掲載いたします。

 

 

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       <古伊万里への誘い>

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*古伊万里ギャラリー46 古九谷様式丸文小皿 (平成14年10月1日登載)

 

 我が家には傷物が多い。磁器の場合、傷を嫌う。従って磁器の傷物は値段も相当に下がるのである。貧乏コレクターにとっては、そこが付け目で(?)、そんなのばかり狙っているからなのだ。

 それにしてもこの傷の程度はどうだ! 我が家でも横綱級の傷である。我が家だけでなく、世間一般においてもそうであろう。よくもまあ、捨てられもせずに残ったものよと感心する。

 ここまで補修されると、補修そのものが文様となり、生まれた時からそうだったのかなーと、一瞬錯覚する。補修が不自然さを通り越し、自然と一体化し、自然そのものになるのである。

 何事も、大胆さは新しいものを生み出し、その生み出されたものはまた自然と化していく。新しい美の創造とはそんなものなのだろうか? この大傷の皿を見ていると、ふと、そんなことを考えてしまう。

 

      江戸時代前期    口径:15.2cm

 

 

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*古伊万里バカ日誌10 古九谷様式三題 (平成14年9月筆) 

    

登場人物
  主人  (田舎の平凡なサラリーマン)
  谷平  (古九谷様式色絵沢瀉文大皿)
  谷男  (古九谷様式色絵丸文小皿)
  谷子  (古九谷様式色絵兎文盃)

         <登場人物中の「谷平」と「谷子」の画像は省略しました>

(画像省略)      (画像省略)
谷平   谷男 口径:15.2cm   谷子
    

 

・・・・・プロローグ・・・・・

 ここのところ依然として三題シリーズが続いている。主人は、この三題シリーズをすっかり気に入ったようである。でも、だんだん「三題」とするテーマが浮かばなくなってきたし、それに、何よりも、それにふさわしい器物も底をついてきたらしい。

 そこで主人にひらめいたのは、「様式」ごとに三点を選び出して「三題」とすることである。そうすれば、数回は続くことになるからだ。

 そうはいっても、「三題」とするからには、何らかの屁理屈をつけたモチーフは必要であろう。そこで当面考えついたのが、大・中・小からそれぞれ一点を選んで三点とすることである。

 その発想のなんとお粗末なことか。どうやら、この三題シリーズも末期症状を呈するに至ってきたらしい。

 

主人:今回は、以前なら「古九谷」といわれていたもののうちから、大・中・小のそれぞれの一点の計三点に登場してもらった。今では、「伊万里古九谷様式」というから、今回の題名も、今風に、「古九谷様式三題」とした。どうだ! 私は物識りだろう!!

器物:そんなこと常識じゃないの! わざわざ言うこと自体古いんじゃないの!!

主人:おっ! これは驚いた。お前たちもずいぶんと勉強しているようだ。感心、感心。

 我が家の器物達も、知性で欠点をカバーする気になったか。

 私も年老いてきてわかってきたが、老いるに従って知性が顔に出てくるようだ。知性豊かだと美しく見えるもんだよ。まして、器物なんざ、人間様なんかよりよっぽど長生きするんだから、老いてますます美しく見えるように、大いに勉強して知性を磨くことだ!

器物:ご主人も、たまには良いことを言いますね。

主人:「たまに」じゃなくて「いつも」だよ! 知性あふれる人間からは、名言もほとばしり出るもんだ! 止めどなくな!!

器物:「ゲゲー!」

主人:まあ、そんなに馬鹿にしたもんでもないぞ! 私に、知性と感性があふれんばかりに備わっていたからこそ、お前達のその潜在的な美を発見することが出来たんだ! そして、こうして、全世界にその美を発信しているんだぞ!

器物:(改めて)「ゲゲー!」
(年寄りは誇大妄想で困るとの陰の声あり。)

主人谷男、お前なんか、誰にも相手にされなかったんだぞ。「古九谷」は石川県の九谷産ではない、どこで生まれたのかわからないという状況のなかで、私が温かい手をさしのべたんだ。国籍不明なうえにその傷だ。誰からも相手にされず、場末の骨董屋の古ぼけたショーケースの薄暗い隅っこのほうに、ただただひっそりと置かれていたよ。それはそれはみじめな姿だったな!

谷男:それはそれはありがとうございました。お陰様で、また日の目を見ることができるようになりました。私も、かつては、華やかな時もあったんです。それが、いつのまにか、初期伊万里だかなんだかわからないということにされてしまって、場末の方に追いやられてしまったんです(涙)。

主人:それはそうだろうな。(しみじみと)

 そんな傷になっても、補修されて残されているんだから、以前は大切にされたんだろうよ。しかも、その傷の修理は上手だし、本職が直したんだろう。修理にそれだけ投資するということは、本体にそれだけの価値があるということだものな。

 人間にも栄枯盛衰があるように、器物にも栄枯盛衰があるもんだな。器物は、ましてや人間より長生きだ。これからも、多くの浮き沈みを体験することだろうよ。私から離れた後も、この体験を忘れることなく、常に明るい希望を捨てずに、逞しく生き、いい器物の生涯をまっとうしてくれ。

 なんかしんみりしてしまった。次は谷子に移ろう。

谷子:お久しぶりです! 暫くぶりです!!

主人:そうだな。買ってから数年は、毎日晩酌につき合ってもらったものな。ぐい呑みにちょうどいい形だし、そのしっとりとした肌がいい! それに、丸々と太った元気な兎を見ていると、なんとなくこっちも元気になってしまって、ついつい盃を重ねることになったもんだ。

 そうはいっても、お前は盃にしては大振りだし、ついつい飲みすぎた! このまま使い続けては身がもたんと感じたし、いくら気に入っていたとはいえ、毎日毎日、数年も使っていると正直飽きもきてしまった!

 そういうわけで、その後、なんとなく疎遠になってしまったわけだ。さんざん世話になったのに、すまなかった。

谷子:いえいえ、どういたしまして。数年も毎日愛していただいたんですもの満足です! 美人は三日も見れば飽きると申します。それを、私ほどの美人を、三日どころか、数年も愛してくれたんですもの! なんと幸せなことでしょう。

主人:それはちょっとオーバーな話だな。「うぬぼれるのもいいかげんにしろ!」と言いたいところだが、当方の大変なる御無沙汰と帳消しということにしておこう。

 ところで、図体は大きいが、そこでひっそりとしているのは谷平だな。

谷平:さようでございます。私は、静かに、ひっそりとたたずんでいるのが好きでございます。

主人:そうよなー。確かに、図柄から見ると、本当に、ひっそりとした感じを受けるな。でも、図体が大きいので、その存在感は大きいよ。

 それにしても、お前は、青手でもないのに、赤を全く使用しておらず、古九谷様式としては珍しいよ!

谷平:そうですね。青手ではないのは確かですし、五彩手でしたら赤が入るのにそれもないし、ちょっと珍しいと思います。

主人:様式としては、まぎれもなく古九谷様式だと思うが、ちょっと変わっているな。

谷平:新発見ですか?

主人:新発見? そう言われてみればそうかな?

 だいたい我が家には、中途半端なのがけっこうあるよ。典型的なものではなくて中途半端なために誰も手を出さないものを買ってきているケースが多いからな。それでも、その後の世の中の研究が進み、同類が典型的なものとして本に載せられたりするようなことがけっこうあるよ。

器物:典型的なものは高くて買えないからでしょう!

主人:言いにくいことをズバリと言うね。でも、それを言うなら、「ご主人には先見の明があるんですね。」とでも言ってほしいよ。

器物:(再び)「ゲゲゲのゲー!」