今回は、「青磁染付 小碗(5客組)」の紹介です。
立面(5客組)
外側にだけ青磁釉がかかっています。
見込み面(5客組)
内側には青磁釉がかかっていません。
底面(5客組)
立面(代表の1個)
見込み面(代表の1個)
底面(代表の1個)
生 産 地: 肥前・有田
製作年代: 江戸時代中期
サ イ ズ : 口径;7.6cm 高さ;5.2cm 底径;3.5 cm
これは、昭和63年に(今から33年前に)、都内の馴染みの古美術店から買ってきたものです。
私は、特に買う気もなかったんですが、店主から「これは、さほど珍しいものではないですが、将来、無傷で5客組となりますと、そう簡単には手に入らないですよ」ということで、強く薦められたものですから、やむなく買ってきたものなんです。
「あれから30年、、、」の「きみまろ」さんの話ではないですが(笑)、あれから33年経った今では、確かに、この手の物の無傷の5客組となると、そう簡単には手に入らないようです。
この小碗の入手に際しての経緯話などにつきましては、かつての拙ホームページの「古伊万里への誘い」の中で既に触れていますので、次に、それを紹介し、この小碗の紹介とさせていただきます。
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<古伊万里への誘い>
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*古伊万里バカ日誌48 古伊万里との対話(押売りされた(?)青磁小碗)(平成19年4月筆)
登場人物
主 人 (田舎の平凡なサラリーマン)
青 児 (古伊万里様式青磁染付小碗)
・・・・・プロローグ・・・・・
春爛漫も足早に去り、早、風薫る五月となった。風薫る五月とくれば、焼物では青磁の季節と言えないこともない。
主人は、これまでに一度も青磁とは対話をしていないことに気付き、今回は是非青磁と対話をしてみたいと思い立った。
しかし、主人は、あまり青磁を好きでないので、めったに買ってこないのである。だから、青磁は、ただでさえ少ない主人のコレクションの中でも更に少ない存在である。また、人様にお見せ出来るような青磁など在るとも思えない。
ところが、厚顔無恥な主人は、一客のみでは人様にお見せ出来るような代物ではないが、五客組ならばなんとかかっこうがつくだろうとの屁理屈をこね、押入から五客組の小碗を引っ張り出してきて対話をはじめた。
主人: いよいよ風薫る五月となった。五月は私の誕生月でもあるし、大好きな月だ。五月晴れの時などの空の色は素晴らしい! その空を見ていると、爽やかな気分になり、頭の中までスッキリ、爽やかになった気分になるよ。
青児: 「五月晴れ」とかという言葉は、焼物でいえば、私のような青磁のことを言うんでしょう。そんな五月生まれのご主人は、どうして青磁が好きではないんですか?
主人: 「青磁」イコール「五月の空」というわけでもないだろうけどね。青く澄んだ釉色には、むしろ冬の空の神秘的な深さを思わせるようなところもあるからね・・・・・。でも、まあ、私は五月生まれだし、身びいきで、「青磁」イコール「五月の空」ということにしておこうかね。
それにしても、青磁のことを好きになれないのは、どうしてなのかな。好き嫌いには理屈がないからな。なんとなく好きになれないんだよね。
青児: そうですか。なんとなく好きになれないということから、ご主人の所には青磁が少ないんですね。
でもですね、ご主人様。焼物は、青磁・白磁で頂点に達し、その後、ボデーに文様を施したりするようになって堕落していったと言われていますよね。最高の美を求めるご主人様にあられましては(オセジ、ミエミエ・・・・・)、もっともっと青磁を好きにならなければいけないのではないですか。
主人: まあな。中国陶磁器を研究されている方なんかがよく言ってるよね。中国では、宋時代に学問や文化が最高度に達し、それに伴い、陶磁器も、宋時代の青磁・白磁で最高度に達し、元以降はその衰退期で、末期的な症状ばかりが目につくとかね。
でもね、私はね、寸分の狂いもなく完成され、高い芸術性に裏打ちされた物は、それはそれとして素晴らしいとは思うんだけれど、なんか、とっつきづらいんだよね。ちょっと親しみづらいんだよね。むしろ、ちょっと堕落しかげんな物にこそ魅力を感じるんだよね。
人間だってそうなんじゃないかな。何の欠点もなく、聖人君主のようなお方に出会った場合、その方は、それはそれは尊敬の対象にはなっても、親しく交わって喜怒哀楽を共にしたり、癒しあったりする対象にはならないんじゃないかな。
青児: 青磁をあまり好きじゃないご主人なので、めったに青磁を買わないということですが、それではどうして私をお求めになられたんですか。
主人: うん。それにはちょっとしたいきさつがあるんだ。
お前を売っていたお店は、先月対話をした大皿を売っていた店と同じなんだ。買った時期も同じ頃だったな。
そのお店とは結構馴染みになっていて、お店の人も私の好みを知るようになっていた。それで、私があまり青磁を好きでないこともわかっていた。でも、「お客さん、たまにはこんな物も買っておいてはどうですか!」と、お前を店の奥の方から出してきたんだよ。
私は、やっぱり、そんなに気乗りはしなかったんで渋っていたら、「お客さん、今でこそこの手の物はさほど珍しくはありませんが、将来、無傷で五客揃いとなるとそう簡単には手に入らなくなりますよ!」と、強く薦められたんだ。
青児: 強く薦められたので買うことにしたんですね。
主人: そうなんだ。お店の強い薦めを断ってお店との関係を悪くしたくもなかったからね。もっとも、お店としては、暮れに近かったから、お金が欲しかったのかもしれないけどね~。
青児: それじゃ、義理で買ったようなものですから、やはり、私には魅力を感じないわけですね。
主人: いやいやそうでもないな。お前の見込みには鉄呉須で五弁花の印判が押されているだろう。完全な青磁じゃなく、余分なものが付加されていて堕落の傾向が見られるわけだ(笑)。そうした、ちょっと堕落しかげんな所に魅力を感じているよ。
青児: ・・・・・?
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*古伊万里ギャラリー110 古伊万里様式青磁染付小碗 (平成19年5月1日登載)
青磁といえば、中国の砧(きぬた)青磁、天竜寺青磁、7官(しちかん)青磁が有名である。
特に、砧青磁の色は、秘色とか翡色、あるいは碧玉のようとかと表現されてきている。また、空のように澄んで空のように深いとか、青く澄んで宝石のように輝くとか、底知れず深い東洋の神秘が漂うとかの、あらん限りの賛辞を呈されてきているところである。
ただ、青磁には、この三手だけでなく、暗緑色の薄汚い青磁釉がかかったものもあり、オリーブ色のくすんだ青磁釉がかかったものもあって、これらも等しく青磁と称されている。
また、青磁には、紫口鉄足と言われるように、素地に鉄分を含んでいるために素地が黒っぽくなっているものが多いが、この小碗のように素地が白いものもある。染付の素地をそのまま用いているために素地が白いのである。
従って、この小碗は、紫口鉄足ではないので、砧青磁のような秘色とか翡色、あるいは碧玉というような深遠な色を漂わせてはいないが、一応、雨過天青のような明るい澄んだ青空を思わせるような青磁とは言えよう。
見込みに鉄呉須で五弁花の印判が押されているが、それがこの小碗のチャーム・ポイントである。
江戸時代中期 口径:7.6cm 高さ:5.2cm