不幸な男だ。
何を言おうと空疎に聞こえる。
これまでの振る舞いが国民の耳を塞いでいる。
どんなに聞こえの良いことを言おうが叫ぼうが届かない。
少なくともボクの耳には届かない。
とんだ道化だ。
国民をなおざりにし、側近の声にしか耳傾けず、己と己の仲間の保身に汲々となった挙句、裸の王様は不本意ながら三文芝居の舞台に立っている。
今頃夫人はどこで会食しているのか。
ソファに深く身を沈めて紅茶を飲みながら夫の会見を見ているのか。
この男は何を言っているのだ。
舌っ足らずな口調で。
いまさら何を言おうと、誰の耳にも届きはしないというのに。