ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ヴィヨンの妻

2009-09-15 22:31:05 | は行
生誕100年ということで
今年~来年にかけて
太宰治映画が数本公開されますが

頭ひとつリードか?というのが
「ヴィヨンの妻」61点★★


浮気に借金、果ては自殺未遂を繰り返す
まさに「生まれて、すみません」な作家(浅野忠信)を

献身的というか、本能的な母性で包み込む
妻(松たか子)の物語。


文学作品の映画化ってなぜか
独りよがりでアート性の強いタイプが多いけど
(イメージでいうと、椎名林檎的世界?)

本作は
「雪に願うこと」「サイドカーに犬」の
根岸吉太郎監督だけに
さすが信頼できるクオリティ。

いくつかの太宰作品から
エッセンスを集めた作りで

暗~くなることもなく
きちんと“見せる映画”にまとまっています。


特に、2歳の息子に夫のことを平然と
「こういう人を、ヒモっていうのよ~」と言い放つ

松たか子の天性の品と
おとぼけが光ってました。


この妻のキャラクター造形はなかなか深くて
「水が低きに流れるが如く素直」ゆえに

無自覚に男を惹きつける、
女の底力や潔さも併せ持つという
難しいニュアンスをよく演じたなあと感じた。

浅野忠信もいままで見た映画のなかで
一番サマになっていたかな。

広末涼子の濡れ場(一応…)もあり


ただ、きちんと作られてはいるけれど
それ以上の衝撃はなかった…ですね。


第33回モントリオール世界映画祭コンペティション部門で
最優秀監督賞受賞。


★10/10から全国で公開
コメント (4)
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