ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

カティンの森

2009-11-12 16:11:03 | か行
「灰とダイヤモンド」(1958年)の
アンジェイ・ワイダ監督最新作。

この人、まだ生きてたんだ…ってすみません
79歳、バリバリでした。


「カティンの森」70点★★☆


1940年、第二次世界大戦中にソ連の捕虜となった
1万5000人のポーランド人将校が
ソ連内のカティンで行方不明になった事件を描いた
静かで力強く、そして悲しい映画。


監督のお父さんがまさにこの事件の犠牲者だそうで
非常に思い入れの強さを感じる渾身の作品です。


実は主演女優の曾祖父も犠牲者の一人だとか。
どれだけ大きな事件だったかがしのばれます。


しかもつい最近の1990年まで
この事件はポーランド国内でもタブーであり
監督も映画化を考えてから完成までに50年以上もかかったそうな


正直、こういう映画に点数をつけるのは難しい。


見るのがつらい気持ちもあるけれど
でも隠されてきた戦争犯罪を
知らずに済ますべきではない、と思うのです。


過剰に血を流したりせず
抑制の効いた映像は美しくもあり

独特の生真面目さと
「みなまで言うな」的察しの美学が隅々にまで感じられ、
悲劇だけで終わらない訴える力があります。

ただ
事件に関わった様々な人の横顔を描こうとしていて
物語の途中でいきなり
新しい登場人物の話が始まったりと
ちょっと混乱するところもある。

完成までの年月と、思いの強さを考えれば
このくらいは当然かもしれません。


★12/5から岩波ホールで公開
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする