ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ブライト・スター いちばん美しい恋の詩

2010-04-11 17:00:58 | は行
今年の上半期NO.1は
おそらくこれじゃないかな、と。

「ブライト・スター」90点★★★★


「ピアノ・レッスン」の
ジェーン・カンピオン監督の最新作ですが
映像も人物描写も
奇跡のように繊細で
美しい!素晴らしい!の一言です。


1818年、ロンドン郊外。

詩人として頭角を現し始めた
ジョン・キーツ(ベン・ウィショー)
隣人の長女ファニー(アビー・コーニッシュ)に出会う。


外出にも必ずお目付役がつくような
この時代にあって

ファニーは得意のお裁縫に生き甲斐を見出し
「詩やロマンでは食べられないけど、洋裁でなら食べていけるわ」
なんて
自分の意見をハッキリと口にする
自立心に溢れる聡明な女性だった。


そんな彼女にキーツは惹かれ、
またファニーもキーツの優しさに惹かれていく。

しかし
ファニーは良家の子女。
貧乏なキーツはなんとか詩で大成し、
彼女と結ばれることを願うが・・・というお話。



実在の詩人ジョン・キーツは
文学作品や映画でよく引用される人気者。
こんなロマンスがあったとは
知りませんでした。


互いにないものを補完しようと惹かれ合う
キーツとファニーの個性の描き分けなど
人物描写もきめ細かいんですが

それを盛り上げる映像センスが
本当にため息ものです。


冒頭わずか数分、
草むらいっぱいに干されたシーツが
風にはためく遠景で
あっさりノックアウトされました。


シーン終わりに多用される
一瞬「ゆらり」と揺れるような
カメラワークには
人の目線のような体温を感じるし


自然光の差し込む窓辺で
読書をしたり、裁縫をする人々の姿は
フェルメール絵画そのまんまの美しさ。


それも
単なるカッコだけの美しさでなく

光乏しいこの時代には
みんな必然として窓辺に集まって用事をしてたんだなと
リアルに理解させてくれるような
意味と説得力を含む映像なんです。


リネンのやわらかさ、
風にふわっとゆれるカーテン
陽光きらめく庭、
一面に咲く野のラベンダー・・・

いままで見たどんな時代劇より
完璧で美しいと思いました。


重要な役者である
ソックス猫(足の先だけが白い黒猫ちゃん)まで
カンペキっす。


★初夏、Bunkamura ルシネマほかで公開。

「ブライト・スター」関連サイト(英語版)
コメント (4)
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