マノエル・ド・オリヴェイラ監督
101歳のときの作品です。
「アンジェリカの微笑み」69点★★★★
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ポルトガル、ドウロ河沿いの街。
ある雨の夜、
孤独な青年イザク(リカルド・トレパ)は
「娘の写真を撮ってほしい」と、お屋敷に招かれる。
そこでイザクが見たものは
長いすに横たわる
美女アンジェリカ(ピラール・ロペス・デ・アジェラ)だった――。
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2015年4月2日に106歳で亡くなった
ポルトガルが誇る世界の巨匠
マノエル・ド・オリヴェイラ監督。
監督が49歳のときに書いた脚本を
101歳になってから撮った、という作品です。
いつも思うのは
「瑞々しいなあ!若々しいなあ!」ということ。
そして艶っぽい。
今回も
まさかアンジェリカが
亡くなっているところから始まるとは……。
死者の写真を撮る風習というのは
「アザーズ」じゃないけど
19世紀末のヨーロッパにあったものだそうですね。
でもまあ、これは“怖い”話じゃない。
アンジェリカにすっかり魅了され
しかし叶わぬ思いにグルグルする青年イザクのもとに
深夜、彼女が現れたりする
ファンタジーな意外性がおもしろく
不思議にハマります。
さらに
カゴの鳥とそれを狙う猫、
物理学論議を交わす人々――と
さまざまな“深読み”要素をはらんでいるけど
しかしそんなに難しいものでなく
死者に魅入られた青年の
はかなく悲しく美しいラブストーリーだと思います。
設定は現代になっているようですが
最初に書かれたのはが1950年代だったこと
イザク青年がユダヤ人であることなどから
ポルトガルにも逃れてきた彼らの背景を想起させ、
それがイザクの
とてつもない異邦人感、常に所在なさげな孤独感の
根っこにあるんだなあと感じました。
そんな“ぼっち”なイザクを演じている
ハンサムなリカルド・トレパ氏は
オリヴェイラ作品の常連であり
監督の孫です。
楽しかっただろうなあ、孫撮るの。
まさに自分の分身だったんでしょうね。
そして
ドウロ河といえば、ポートワインですねえ。
★12/5(土)からBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。
「アンジェリカの微笑み」公式サイト