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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

禁じられた歌声

2015-12-23 23:56:04 | か行

この映画を観たあとに
11月にマリのホテルで襲撃事件が起きた。

行ったことのある国のことのように、ショックだった。


「禁じられた歌声」69点★★★★


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アフリカ、マリ共和国。

少女トヤは
父(イブラヒム・アメド・アカ・ピノ)と
母(トゥルゥ・キキ)、
12歳の牛飼いの少年イサンと
つつましくも平和に暮らしていた。

だが、いつからか街はイスラム過激派に占拠され
歌も笑い声も、サッカーも禁止される。

そんななか
イサンの大切な牛をめぐって、地元の漁師と争ったトヤの父は
過激派の兵士たちに連行されてしまい――。


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1960年まで仏領スーダンだった
西アフリカのマリ共和国。

世界遺産にもなっている
美しい街・ティンブクトゥで起きている現実を
隣国モーリタニア出身のアブデラマシン・シサコ監督が
フィクションのかたちで描いた作品です。

マリという国の場所も、その状況すら知らなかったので
観ながら
「こんなところにもイスラム過激派が・・・」と驚きましたが

映画のなかで
イスラム過激派の兵士たちが「シリアから来た」とか話していて
さらに
2015年11月にマリのホテルでの襲撃事件があり

ああ、すべてがつながっているんだな、と
この状況を突きつけられたようでショックだった。
同時に
現状を知る大きな手助けになった映画でした。

映画としては
厳しい状況を描いているけれど
ストレートな処刑シーンとかはないんです。

場面もすごく美しい。
トヤの父と漁師のいざこざが悲劇に転じる川べりのシーンなんて
めちゃくちゃ印象的でした。

そして
不条理に巻き込まれるトヤの父が
なお神を信じ、運命を受け入れている様子も印象的で
なぜ、そういう思考になるのかを
考えさせられました。


ただ映画のなかで
無垢な動物たちが人間たちの代わりになっているようで
ワシ的にはそれが辛かった。

そして
この映画では
イスラム過激派がどうやって
街を占拠していったのかは描かれていない。

そのへんは
「わたしはマララ」を参照するといいと思います。

すべては、つながっているようです。


★12/26(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「禁じられた歌声」公式サイト
コメント
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