ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

グランドフィナーレ

2016-04-14 23:59:00 | か行

老いと若さ、衰退と美。
時の流れをパッケージした
アートのような作品。

「グランドフィナーレ」70点★★★★


***************************


スイスの高級ホテルで保養している
高名な指揮者・フレッド(マイケル・ケイン)。

「シンプル・ソング」という名曲を生んだ彼には
英国女王から名誉あるオファーがきているが、
彼は「もう、あの曲はやらない」と侍者を追い返す。

そして彼はホテルに滞在している
鬱屈したハリウッドスター(ポール・ダノ)や、
友人の映画監督(ハーヴェイ・カイテル)らと
ゆったり、けだるい日々を過ごすのだが――。


***************************


ショーン・ペンの
「きっと、ここが帰る場所」(11年)はすごく好きだったけれど

「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(13年)
全然わからなかった(笑)

そんな“難しい”
パオロ・ソレンティーノ監督の新作です。


ただ、本作を観て
やはりこのオリジナルな映像美はすごい!と感じた。

別物のような上記2作にも共通するのは
どこか退廃を含んだ、あやうい美しさ、なのかもしれません。

本作は
スイスの高級保養所で
ラグジュアリーでデカダンな時を過ごすリッチな人々を
けだるく、甘美に描いていく。


主人公である著名な指揮者が
英国女王からの依頼を頑なに固辞する、というのがメインのストーリーで
そのほかは
一瞬のショート・ショートの
積み重ねのような展開です。

でもそれらに
けっこうハッ!とするオチがあったりして。

特に主人公の妻をめぐる話はハッ!とした。
心地よく、うつらうつらしていると
見逃してしまうかもしれませんので
ご注意を(笑)。

描かれるのは
老いと若さ、衰退と美。

絶えず流れる音楽の存在の大きさも
とても印象的でした。

いわゆる“普通の映画”ではないけれど
「美」の究極に触れる体験ができると思います。


★4/15(金)から新宿バルト9、シネスイッチ銀座、Bunkamura ル・シネマほかで公開。ほか全国順次公開。

「グランドフィナーレ」公式サイト
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする