老いと若さ、衰退と美。
時の流れをパッケージした
アートのような作品。
「グランドフィナーレ」70点★★★★
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スイスの高級ホテルで保養している
高名な指揮者・フレッド(マイケル・ケイン)。
「シンプル・ソング」という名曲を生んだ彼には
英国女王から名誉あるオファーがきているが、
彼は「もう、あの曲はやらない」と侍者を追い返す。
そして彼はホテルに滞在している
鬱屈したハリウッドスター(ポール・ダノ)や、
友人の映画監督(ハーヴェイ・カイテル)らと
ゆったり、けだるい日々を過ごすのだが――。
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ショーン・ペンの
「きっと、ここが帰る場所」(11年)はすごく好きだったけれど
「グレート・ビューティー/追憶のローマ」(13年)は
全然わからなかった(笑)
そんな“難しい”
パオロ・ソレンティーノ監督の新作です。
ただ、本作を観て
やはりこのオリジナルな映像美はすごい!と感じた。
別物のような上記2作にも共通するのは
どこか退廃を含んだ、あやうい美しさ、なのかもしれません。
本作は
スイスの高級保養所で
ラグジュアリーでデカダンな時を過ごすリッチな人々を
けだるく、甘美に描いていく。
主人公である著名な指揮者が
英国女王からの依頼を頑なに固辞する、というのがメインのストーリーで
そのほかは
一瞬のショート・ショートの
積み重ねのような展開です。
でもそれらに
けっこうハッ!とするオチがあったりして。
特に主人公の妻をめぐる話はハッ!とした。
心地よく、うつらうつらしていると
見逃してしまうかもしれませんので
ご注意を(笑)。
描かれるのは
老いと若さ、衰退と美。
絶えず流れる音楽の存在の大きさも
とても印象的でした。
いわゆる“普通の映画”ではないけれど
「美」の究極に触れる体験ができると思います。
★4/15(金)から新宿バルト9、シネスイッチ銀座、Bunkamura ル・シネマほかで公開。ほか全国順次公開。
「グランドフィナーレ」公式サイト