ジャ・ジャンクー監督の視点には
国境も時空を超えた
広さがある。
「山河ノスタルジア」73点★★★★
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1999年、中国・山西省。
小学校教師のタオ(チャン・タオ)は
幼なじみの二人から思いを寄せられていた。
一人は炭坑で働くリャンズー(リャン・ジンドン)。
もう一人は、実業家のジンシェン(チャン・イー)。
内向的なリャンズーとは対照的に
ジンシェンは赤いスポーツカーを乗り回し、
タオをデートに誘う。
彼の姿はまさに「これからの中国」を表しているようだった。
そして、タオが選んだのは――?
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ペット・ショップ・ボーイズの
あの曲からはじまる謎のオープニングがインパクト大!
(その唐突さに、一瞬、アピチャッポン監督の「世紀の光」のラストを思い出しました(笑)
しかし、話は意外に恋愛モノっぽい。
ワシがいままで見てきたジャ・ジャンクー作品のなかでは
一番、とっつきやすいかもしれません。
まず、時代は1999年。
幼なじみの女性を挟んだ、男二人の三角関係から始まる。
一人は実直そうな炭鉱労働者で
もう一人は新進実業家。
で、
恋愛ものかあ、と思うと、
15年後、さらに10年後――と、進んでいく。
これが、けっこう時間を超えてくる大きな体験なんですねえ。
一見、ありがちなラブストーリーかと思わせつつ
過去、現在、そして少し未来の
中国の経済発展と、状況を俯瞰して見ているところがすごい。
さらに、ちゃんと収束していく。
そう、あの曲から始まるナゾなオープニングも、
ちゃんと終わりにつながっているのだ。
それにしても。
「1999年のあのとき、どっちの男を選ぶか?」で
ヒロインの運命は変わるわけだけど、
ワシ的には
「どう考えても炭鉱労働者じゃね?実直だし、誠実そうで、いい人だし」と思ったんですが
プレス資料にあったインタビューで
ヒロイン役チャン・タオが
「もし、私が彼女の立場だったら、実業家を選んだ」と話していて
そのことにもっとも大きく驚いたのでした(笑)
★4/23(土)からBunkamura ル・シネマほか全国順次公開。
「山河ノスタルジア」公式サイト