25年、追えるドキュメンタリーって
やっぱり、すごいですよ。
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「ふたりの桃源郷」74点★★★★
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舞台は山口県の山奥。
電気も水道もないその土地に暮らす老夫婦の
25年間を追った
山口放送制作のドキュメンタリーです。
なんといっても
“25年間の記録”というボリュームがすごい。
1971年生まれの佐々木監督は
先輩が撮った夫婦の取材を引き継ぎ
ここまでに昇華させたそう。
この長期取材は間違いなく
テレビならではの“恵み”だったと思います。
そして映画は
老夫婦――寅夫さんとフサコさんの
歴史と絆を追っていく。
夫婦の日々も興味深いのですが
でも、この映画で結局描かれているのは
「老いた両親を持つ、子のあり方」のほうなんです。
夫婦の3人の娘たちは
老いた両親に「一緒に暮らそう」と涙ながらに頼む。
だが「子に面倒も、迷惑もかけたくない」と夫婦は言う。
しあわせな夫婦だなあと思う反面、
やはり親子とは別の「個」なのだと考えさせられます。
だって彼らは
「自分の子の負担になりたくない」けど、
見知らぬ若い国民たちの世話にはなっているんだよね・・・。
それは当然の互助なんだけど
多くの親が同じ心理を持つのを見ると
やっぱり、親にとって子ってなんだろう?と考えてしまう。
自分だったらどうするかなあと。
そんな
複雑な思いもよぎりつつ、
映画の後半、状況が変化していきます。
なんと
三女夫婦が彼らの山を維持するために
仕事を辞めて山奥に移住してくるというのですね。
なかでも
「(彼らを看るのは)自分の親にできなかった罪滅ぼしだ」と言う
三女の夫がえらい!
じいちゃんの
「人間、何かすることがないとボケる!一日中テレビ見てたらボケる!」と言うシーンも
「ごもっとも!」と喝采だ。
最後、つがいを片方をなくした鳥のように
山に向かってよび続けるおばあちゃんが、
実に切ない。
そして、さらにその先まで
追ったことも素晴らしいと思いました。
吉岡秀隆氏のナレーションもいいですね。
★5/14から全国で公開
「ふたりの桃源郷」公式サイト