衝撃のラスト12分に、なにがあるのか?
******************************
「FAKE」73点★★★★
******************************
森達也監督、15年ぶりの単独監督作。
ゴーストライター騒動の
あの佐村河内守氏の自宅でカメラをまわしたドキュメンタリーです。
ちなみに
ゴーストライター騒動とは
2014年、聴覚障害がありながら「交響曲第1番<HIROSHIMA>」を作曲し
“現代のベートーベン”と言われた佐村河内氏の作品を
新垣隆氏が「自分が作っていた」と告白した問題。
「佐村河内氏の耳を聞こえないと思ったことはない」など
いろいろ暴露した発言の衝撃波はものすごかった。
佐村河内氏は会見で「自分だけの作品ではなかった」と認めて
その後、沈黙。
そんな氏を森監督が撮ったということで
かなり話題になっておりました。
で、映画はというと
監督が佐村河内氏の自宅にお邪魔し、
彼と奥さんの様子や、飼い猫(可愛い!)の姿、
取材を申し込みにくるマスコミなどを写したもの。
森監督がまず
「佐村河内氏を信じているのか?」といえば
まったく我々とおなじスタンスなので
とりあえず、見る我々が判断していくしかない。
で、
佐村河内氏は新垣氏の言い分に不満を持ち
「自分にはたしかに聴覚障害がある」
「作曲はできる」と言い続けるんです。
しかし、佐村河内氏の語る言葉は
どうしても残念ながら怪しい。
いわば「物証がない」状態なんですね。
特に
取材に来た海外メディアの質問は鋭く
見ながら
「もう黙っていればいいのに」とすら思ってしまう。
それでも、佐村河内氏が黙らずにいられなかった理由とはなんなのか?
そして映画は「決して言わないでください」の
ラスト12分へと突き進みます。
ハッキリ言って、これは予想外でした。
というか、ほぼ誰もが違うパターンの衝撃を
予測していたと思う。
結局思ったのは
「人間は自分の信じたいものしか信じないのだ」ということ。
それがものすごくリアルな実感となり、
衝撃になる。
なかなかすごいですよ。
この映画だって
あらかじめ作られたシナリオで、
監督も共犯でないと言えるのか?
さあ、なにが本当のことだろうか?
ただ言えるのは
「猫は、全てを知っている」(笑)
合間に挟まる猫の視線が
客観的かつクールな視点となるのがいいんです。
そしてこの映画で
一番真実と思えるのは
奥さんが毎回毎回、訪問者に出すケーキと
それを嬉しそうにする佐村河内氏(笑)。
単なる甘党の猫好き?
いや、これが大きなキーワードではないでしょうかね。
★6/4(土)からユーロスペースほか全国順次公開。
「FAKE」公式サイト