クルマのことを知らなくても、おもしろかった!
「フォードvsフェラーリ」76点★★★★
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1960年代半ば。
レーサーとしてNO.1だった
キャロル・シェルビー(マット・デイモン)は
ある事情から、レースから退き、
クルマを作り、売る側のカー・デザイナーとして活躍していた。
そんなシェルビーのもとに
アメリカ最大の自動車メーカー、フォードから依頼が来る。
それは、過酷なレースとして知られるル・マン24時間耐久レースに
出場する車を作ってほしい、というもの。
しかも王者フェラーリに勝てる車を――というものだった。
期限は90日。
「そんなの不可能だろ?!」と困惑するシェルビーだが
不可能を可能にするかもしれない、ある人物を思い付く。
それは天才的なドライブテクを持ち、車の性能にも熟知しているが
破天荒な性格で仕事に恵まれない
ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)。
シェルビーはマイルズに
自身のドライバーとしての想いを託しながら
ル・マンに挑戦することになるのだが――?!
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実話を基にした作品で
マット・デイモン×クリスチャン・ベイルが初共演。
二人がフォードVsフェラーリな敵同士なのかと思ったら、そうではなく
どちらもフォードに属しながら、
タッグを組んで、王者フェラーリに挑む――という構図。
まずは主演二人の
ちょっと変わったバディぶりがキモですね。
どちらもクルマに命をかけてるオイル臭く男臭いキャラだけど
マット・デイモンのほうが
清濁併せのむおじさんになってる。
対するクリスチャン・ベイルは妻と子の良きパパでもあるので
マット・デイモン=いい人、クリスチャン・ベイル=ヤバい人、という定型を変化球に崩し、
ともに、見たことのない顔を見せてくれるんです。
てか、ワシ、この映画でクリスチャン・ベイルを初めて
「カッコイイ!」と思った(笑)。だっていっつもヤバいんだもん(笑)。
そんなキャラの意外性に加え、
話がレースだけでなく「会社」や「社会」であるところがミソ。
レースのことは何も知らないくせに、金も出すけど口も出す大企業フォードに
「事件は現場で起こってんだ!」と怒る主人公二人。
そこに
「大企業VSフリーランス」「組織VS個人」的な思いが描かれていて
ピキーン!ときました。
レースのハラハラもありつつ
主義を通すか、世間の澱にまみれるか、を問うような話なのが
おもしろいんですねえ。
クリスチャン・ベイルの妻、カトリーナ・バルフが
サッパリしてるのにセクシーで、ナイス人選!
さらに息子役はノア・ジョブ君で、これもナイス!
危険を冒しても、レースに陶酔していくドライバーの感覚にも共感できたし、
ル・マンの過酷さもわかったし
なにより、組織や社会がつきまとう
男性の生き様の過酷さもよくわかった。
アメリカが、車が、男たちが強かったあの時代は
いまの我々に、けっこういろいろを思わせてくれるんだなあと。
映画.comさんに、レビュー書いてます。
マツダのドライバーとして
ル・マンで日本人初のクラス優勝を成し遂げた寺田陽次郎さんにインタビューしてます。
映画と併せて、ぜひご一読くださいませ!
★1/10(金)から全国で公開。