こんな、荒唐無稽な事実があったら
こんなミステリーを作りたくなる気持ちもわかる。
「9人の翻訳家 囚われたベストセラー」70点★★★★
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世界的ベストセラー「デダリュス」三部作の完結編が
いよいよ出版されることになった。
出版を前に、9カ国語の翻訳家たちが
ある豪邸の地下室に集められる。
翻訳家たちは情報漏洩を防ぐため、
携帯電話もパソコンもすべて没収され、
厳しい管理下で、監禁状態で作業をする。
そんななか、ネットに小説の一部が流出し、
世間は大騒ぎに。
犯人は、事前に原作を手にすることができる
9人の翻訳家以外に考えられない――。
いったい誰が、どうやって?!
だが
世紀のミステリー流出問題は、
意外な展開へと進んでいき――。
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映画化もされ、みなさんご存じであろう
ダン・ブラウン著の大ベストセラー「ダ・ヴィンチ・コード」。
その4作目「インフェルノ」の出版時に
実際にあったという「翻訳者隔離」にヒントを得たミステリー。
事前に内容を外部にもらさないように
9カ国語の翻訳家が、密室で、監禁状態で翻訳作業をさせられたそうで
世紀のベストセラーをめぐる、その狂騒の異常さを
皮肉った目線でとらえ、
そこからミステリーにした、ということなんだと思います。
最初は
9人のうち、誰が犯人なのか?
密室で監視のもと一体どうやって⁈
という方向で話は進むんだけど、
そのうちに、「そもそも、顔出しNGな、このベストセラー作家は誰なのか?」という
謎解きへと進んでいく。
ただ、100%すごく出来のいいミステリーかというと微妙ではあり
そもそも
これだけのベストセラー作家が、なぜここまで顔出しをいやがったのか?
従順だった出版社側の秘書が、なぜいきなり寝返ったのか?
(ここはどうしても、ピンとこなかった)
などなど
不足を感じる部分もあるんですが
とにかく、沁みたのは
ベストセラーが殺人動機に十分になり得る、
出版界のギリギリの台所事情が、リアルに描かれている点でした(苦笑)。
低迷を続け、打開策をいまだもてない出版業界にとって
ベストセラーは、まさに会社を救う救世主にほかならない。
それを巡る争いって、
ああ、十分に殺人の動機になり得るよな・・・・・・と
うなずけるのが怖かったす。
★1/24(金)からヒューマントラストシネマ有楽町ほかで公開。