ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ

2020-03-28 01:11:45 | さ行

あのエミール・クストリッツァ監督が

元ウルグアイ大統領を写したドキュメンタリー。

 

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「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」70点★★★☆

 

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2012年の国連で素晴らしいスピーチをして

世界に注目された

元ウルグアイ大統領、ホセ・ヒムカ氏。

 

まったくもって無知ながら

ワシ、この大統領のことを知りませんでした。

 

その質素な暮らしぶりで

「世界でいちばん貧しい大統領」と紹介され

世界的に有名な方なんですね!

 

自分のお給料を貧困層のために、とすべて寄付し

真に人のために動く。

そんなムヒカ氏にクストリッツァ監督も魅了され

「ドキュメンタリーを撮りたい!」と参上したそう。

 

映画はムヒカ氏の人生、そして

2015年に任期満了で、大統領の座を辞するまでを追っていきます。

 

何も知らずに見はじめると

まず、丸っこくて、くしゃっとした笑顔のチャーミングなムヒカ氏が

画面に登場する。

 

それだけでも、ワクワクしてくるんですが

ムヒカ氏に対面している監督の、まあ存在感がハンパない(笑)

 

「マテ茶」という、苦そうなお茶をガシガシと漉しながら

お互いにタバコ(葉巻)をくゆらせながら見つめ合う

オヤジ2人のオーラの拮抗といったら!(笑)

 

そこにまず「オトナの了解」のもとのドキュメンタリーなんだな、

という印象がありました。

 

 

そして映画はムヒカ氏の人となりを追っていく。

 

発する言葉すべてが示唆に富む「名言」で

街を歩けば人々にめちゃくちゃ囲まれ

 

スマホを操作しながら

「まあ便利だけどさー。どうせなら、ワシらのような老人向けに

トイレをつけてほしいよね」とか(笑)

”愛されキャラ”ぶりがよくわかる。

 

しかし、その過去には

軍事政権下で貧困層のために活動し、10数年、投獄されていたこと、

 

さらに

活動家時代、大義のために犯罪も行なっていたこと――などが

明かになっていくんです。

 

そうした経験が、弱者にとことん寄り添う

いまの、ムヒカ氏をかたち作ったんだなあと。

 

さらにおもしろいのは

ムヒカ氏の妻にフォーカスが合っていく点なんですねえ。

 

二人の出会い、そして活動家としても歩みを同じくした歴史。

そして奥さん、

実は副大統領も務めているんですよ。

すげー。

 

そして、映画はやがて

夫婦の純粋な愛の物語になっていくんです。

 

これって

想田和弘監督の最新作「精神0」(5/2公開)と親和していて

すごく興味深かった。

(実は今日、想田監督に「AERA」にてインタビューさせていただきました!また続報します)

 

さらに。

ムヒカ氏について、ちょうど同タイミングで

もう一本、ドキュメンタリーがあるんです。

「ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ」(4/10公開)

 

こちらは若い日本の監督がムヒカ氏を追ったもので

2作の違いがまたおもしろい。

ぜひ、見比べてもらいたいです。

 

結論としては

「映画、そしてドキュメンタリーは、真に作り手を写すものなのだ」ということ。

 

そして、ムヒカ氏の言葉と生き方は

いまの世にものすごく響くのだ、ということです。

 

新型コロナで大変な時期ですが

こうした映画を観ることで「心のもちよう」を学ぶこともまた

救済になる、と思います。

 

無理なきように、ぜひ、映画を摂取してくださいませ。

 

★3/27(金)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開。

「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」公式サイト


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