ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ジュリー&ジュリア

2009-10-18 16:17:34 | さ行
12/12公開ですが
これはぜひオススメしたい

「ジュリー&ジュリア」85点★★★☆


「ユー・ガット・メール」の脚本&監督と
「プラダを着た悪魔」の出演者が集まって
(「プラダ~」の意外な2人がカップルに・・・(笑)でもはまってる)


ロマンチック・コメディ路線
女性の生き方指南をプラスした映画。


出てくる料理も美味しそうだし
見ればウキウキと
元気にハッピーに
なれること請け合いです。


2002年、冴えない毎日を変えたい
アラサーのジュリー(エイミー・アダムス)が

1950年代に初めて
フランス料理をアメリカの家庭に広めた
料理人ジュリア・チャイルド(メリル・ルトリープ)の料理を
365日作って
ブログで公開する、というお話。


ブログという今日的な素材と
魅力的な「料理」をベースにして

50年違いの時代を生きる
実在の女性2人の物語が
上手に組み合わせられています。


ともに
「何かしなきゃ」という
思いに突き動かされて行動を起こした女性であること


そして落ち込んだときに
「キミは天才だよ」と優しく励ましてくれる
いいダンナに恵まれてる、という共通点があり←これ大事!!

特に女性の共感度が高いと思われます。

(実際、50年も前に
外交官の妻としていくらでも安穏とできたのに
そうしなかったジュリアってすごいよなあ。


最近はちょっと貫禄が鼻についてきた感ある
メリル・ストリープですが

今回は
テレビ番組で食材を平気で落っことしちゃうような
すっとぼけ具合が愛らしいジュリアを
めちゃくちゃチャーミングに演じてました。


実はこの映画を
「おもしろいよー」と勧めてくれたのは
先日「ジェイン・オースティン」取材のときにお会いした
学習院大の上岡伸雄教授。


番長は知らなかったんだけど
ジュリア・チャイルドって
アメリカでは相当な有名人だそうで
彼女の存在を知らしめただけでも
この映画の功績は大きいようです。

それに
メリル・ストリープそっくりらしいです。


ブログ始めたての番長にとっては
見えない読者がいる
新しい媒体のおもしろさや
毎日続けることの大切さも
つくづく感じさせてくれました。

よしっがんばるぞー!
できるだけ…

★12/12からTOHOシネマシャンテほかで公開
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ゼロの焦点

2009-10-17 15:00:06 | さ行
いや~1週間以上も休んでてスミマセン。

爆忙からも風邪からもなんとか
脱出いたしました。

このところいい映画いっぱい見たので
またボチボチがんばります。


「ゼロの焦点」75点★★★


主演女優3人の顔ぶれが地味だな~と
二の足を踏んでいたのですが
さすが松本清張、
2時間11分、がっちり楽しませてもらいました。


松本作品は未読が多く
自分、幸せだと思います。

時代は戦後、昭和30年代。

主人公は
結婚して1週間で夫が行方不明になってしまった
新妻・禎子(広末涼子)。

お見合い結婚ゆえ
夫のことを何も知らない彼女が
その失踪の謎と過去を探る…というお話。

いない人物を探し、謎を解き明かしていく展開がおもしろく
宮部みゆきの『火車』は
ここから構成をいただいたのかなと感じた。


小説の発表当時は
女性が推理するという斬新さで話題になり
「崖の上で犯人が罪を告白する」という
サスペンスドラマでおなじみのシーンは
これが元ネタなんだそう。へえ~


映画のほうも犬童監督のセンスで
女優がうまく生かされているし
「昭和」の描き方も丁寧。

ラストを含め、要所要所に
映画ならではの味付けが
きちんと感じられました。

最後の最後で
「なんで?」と疑問の残るシーンもあったけど
小説を読んでみれば解けるかな…


映画のあと、所用で
夕暮れの有楽町→新橋を歩いたんですが
まさに映画の背景となる
戦後のドヤ街の残り香が感じられて
トリップ感がありました。

鑑賞後はガード下で一杯、がおすすめコースですな。


★11/14から全国で公開
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わたし出すわ

2009-10-09 19:25:01 | わ行
風邪、一転してだいぶよくなりました。
一部のかたにはご心配を
おかけいたしました。あいすみません。

で、今回はちと残念な映画を…

「わたし出すわ」50点★★


森田芳光監督が
深津絵里主演の「(ハル)」(懐かし~)以来
実に13年ぶりにオリジナル脚本で作った映画。


舞台は北海道・函館市。

久々に故郷に帰ってきた麻耶(小雪)は
仲の良かった同級生たちに会い

彼らの夢やしたいことを聞いては
「わたし出すわ」と
なぜかポンと
大金を出してくれる…という
夢のような(?)不思議なお話。


お金の使い方を通して
幸せってなんだろう?ということを
考えさせる映画です。


どことなくエッチ?というか
耳に残るタイトルセンスや
“お金”という難しいテーマを扱いつつも
意地汚さや品のなさを一切感じさせないところは
悪くないのだが


とにかく
森田リズムとしかいいようのない
独特のスローテンポや
わざと間を外したような会話が

1980年~90年代チックで
いまの時代、生理的に受けつけにくいのです。



例えば「空気人形」の是枝監督とか
「ぐるりのこと。」の橋口監督とかが持っている
「いま」の空気感が
すごく必要な種類の映画なのに


20年前と変わらない「空気」で
映画を作り続けているのかなあ、という
ズレを感じてしまうのだ。


なかには笑いを誘うシーンもあるので
残念!というところでした。


映画監督も空気を
読まないといけない時代なんでしょうな。


★10/31から恵比寿ガーデンシネマ、新宿バルト9ほか全国で公開
コメント (4)
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ジェイン・オースティン 秘められた恋

2009-10-07 17:55:35 | さ行
鹿児島への日帰り“弾丸”出張で
風邪、ぶりかえしてます…
医者にも行ったんだけどなー
みなさんもお大事に。


さて
深まる秋にぴったりの文学的作品

「ジェイン・オースティン 秘められた恋」71点★★☆


「プライドと偏見」とか
「ジェイン・オースティンの読書会」とか
彼女の原作や、関連した映画を
いろいろ見てきたので
本人に興味あって、観てみました。


なかなかおもしろかった。

セリフも明快でわかりやすいし
非常に整頓されていて好印象。

自立を模索する女性の物語として
いまの時代にも
共感されやすいと思います。


舞台は1795年、イギリス。
聡明で独立心を持つ
20歳のジェイン・オースティン(アン・ハサウェイ)は
親からすすめられた良家の息子との縁談に気乗りせず

貧しい法律家のトム・ルフロイ(ジェームズ・マカヴォイ)と
恋に落ちるというお話。


この経験から名作「プライドと偏見」が
生まれたというのも史実だそうで
興味深いです。


まあ、オースティンは生涯独身だったので
この恋の結果は言わずもがな、なのですが


彼女の選択が
単なる家族のための自己犠牲ではなく

おそらく
「小説を書き続けたい」という
自己表現を選んだゆえの犠牲であることを
観客に想像させる脚本がうまい。

自立と結婚の間で揺れる
女性の心のひだを
うまくすくいとっていると思います。

しかし
ジェインに
「まぬけっぽい」とフラれてしまう
良家のおぼっちゃん。

たしかにちょっとモッサリしてるけど
なかなか洞察力に満ちたいいヤツで

ぽつお番長など
「最初っからこっちにすればいいのに」
と思ってしまうのですが


これは男を見る目が肥えたのか
単なる年の功か…


★10/31からTOHOシネマズシャンテほか全国で公開。

今日、学習院大学文学部教授で
『洋書事始は映画から』などの著作もある
上岡伸雄さんに
本作についてインタビューしてきました。
さすが文学ツウならではの視点が
とてもおもしろかった。

10/26発売の週刊朝日で紹介します。
お楽しみに!
コメント (3)
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牛の鈴音

2009-10-05 19:32:02 | あ行
12月公開でちょっと早いけど

「牛の鈴音」85点★★★


試写が終わっても涙が止まらず
帰りの電車のなかでも思い出して
ボロッボロ泣いた。


この涙加減は「フランダースの犬」級だ

「泣かされるとわかってて、見たくないやい」
という気持ちもすごくわかる。
でも、じゃあ「フランダースの犬」を知らないほうがよかったか?

私は観てよかったと思うよ。


韓国で爆発的にヒットし
社会現象にまでなった
老いた農夫と一頭の牛を追ったドキュメンタリー。

78分という短さも素晴らしいんだけど


主人公は79歳のおじいさんと
おじいさんと一緒に30年働いてきたメスの牛。

普通は農耕牛の寿命って15年くらいらしいのだが
この牛は40年も生きてる。


そんな老人と牛の
山村での貧しい農家暮らしを
静かに訥々とカメラは追うのです。


牛が足の悪いおじいさんを支えて
ずっと重い荷車をひいてきたこと。

おじいさんも牛のために
農薬を使わない新鮮な草を毎日取ってあげること。


おばあさんは
「私より牛のほうが大事なんだ」と
ブーブーまくしたてるけど
おじいさんと牛は無言で見つめ合うわけ。


おじいさんは老いた牛の身体に
むち打って荷車を引かせるけど
それはかわいそう、とか残酷とかじゃない。

生まれてからずっと
働き続けてきた彼らはお互いに
「止まるときは、死ぬときだ」と
分かり合ってるからなんだ。


この映画には
毎日を繰り返して生きる強さと
繋いでいくことの大切さ、

そしてともに生きるもの、係りあうものの間に生まれる
穏やかで強い愛がある。


そして命はいつか消えゆくものだという
真理もまた映ってる。

本当にしみじみ、いい映画です。


NHKの「里山」系ドキュメンタリーが好きな人は
絶対ハマると思う。

親にも見せたいと思いました。

★12月からシネマライズ、銀座シネパトス、新宿バルト9ほかで公開
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