ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フード・インク

2011-01-24 18:08:46 | は行
鳥インフルのニュースも
胸が痛んで見られない番長ですが

目をそらしてはいけない
現実があります。


「フード・インク」69点★★★

incは株式会社、の意味。

企業に牛耳られ、狂ってしまった
食料生産を描く米のドキュメンタリー。


科学の進歩が生んだ汚物を
さらに科学で制圧しようとする

人間の愚行を浮き彫りにする
非常に意味と意義のある作品です。


O-157が飼育場で
生み出されたなど知らなかったし。

つくづく
人間て、何様?とうんざりしますわ。


食肉の話がメインなので
やはりちょっと見るのがつらい部分もあります。

あまり映像として
どぎつく見せているわけでないですが

それでも
ギュウギュウ詰めの厩舎で育つチキンや
命を尊重されない家畜たちの姿は
見ていて本当につらい。

逆に
放牧されて、のびのびと育つブタさんの
なんと幸せそうなことか。

同じ食べるなら
そういう作られ方をしたものを
選びたい。


食べ物を大切にしない人間は
人間も大切にできない、という訴えが
心に響きました。


「食の安全」なんて言って
結局、自分や自分の子どもの
安全ばかり考えてやしませんか?

それが利己的だってんです。

食べられるほうの身になって
彼らを考えてやることで

我々も安全を
いただくことができるんですと
伝える映画ですね。……自分も反省。


ただ
いままで見た映画で
知ってる部分もけっこうあり。

食料生産の工業化の実態は
「いのちの食べかた」で

ファーストフードの食肉生産と労働者の実態は
「ファーストフード・ネイション」で

ほぼすべての食品にコーンが入ってる事実は
「キング・コーン」で見てきたはず。


でもいつも勉強しては
忘れてる情けない事実も明らかに。。。

いい加減
自分にできることを
やるべきときじゃねーか?!

★1/22から全国で順次公開。

「フード・インク」公式サイト
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完全なる報復

2011-01-22 20:11:08 | か行
復讐は
ハッキリ言って
スッキリします。

「完全なる報復」70点★★★


善良な市民クライド(ジェラルド・バトラー)の日常は
ある日、一変した。

家に押し入ってきた二人組に
目の前で妻子を殺されてしまったのだ。


犯人は捕まるが
事件を担当したエリート検事
ニック(ジェイミー・フォックス)は

クライドの意思に反して
司法取引を強行し

主犯格の男は
極刑を免れてしまう。

それから10年。

ついに怒りに燃える彼が
動き出した――!



復讐ものは多く見てきましたが
いや~ここまでやってくれるか!という感じで

かなり溜飲下がりました。


「正義とは何か?」なんて議論は
もうやりつくしたし

いくら叫んでも
疑問の残る制度は変わらない。

だからもう
こういう手段に出ました、という。


犯罪被害者の動機に共感できるし

かつ綿密に練られた仕掛けなので
スッキリ度が高い。


しかも意外なまでに
予想の範囲をドカスカ越えられるので

残忍な描写にもあれよあれよと
引き込まれてしまいました。


まさかこんな方向に進むとはね・・・・・・。


G・バトラーVSJ・フォックスという
キャスティングも

情熱と冷静の対比という感じで
まずまずでした。


ただ
そもそもきっかけとなる自宅の守りが
甘すぎないか?など

突っ込みどころはありますが


こういう
「自分にはできそうにない」
ことを見せてもらうのは
やっぱり“映画ならでは”の興です。

あ~
せいせいした。

★1/22からTOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国で公開。

「完全なる報復」公式サイト
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ソウル・キッチン

2011-01-21 18:57:59 | さ行
コケティッシュで楽しくて
お腹が空きました。


「ソウル・キッチン」72点★★★☆


ドイツのハンブルグで
レストラン「ソウル・キッチン」を経営する
ジノス。

倉庫を改装したような店で
メニューは冷凍のフライドポテト(!)など
「ん?」なものだが
そこそこ客も入ってる。


ある日、ジノスは
高級レストランで
シェフがクビになる場面に居合わせ

「うちにこないか?」

と、シェフをスカウトする。


しかし、このあたりから
なにやら
レストラン経営にも人生にも
暗雲が立ち込めてきて…?


イスタンブールの
ミュージックシーンを撮った
「クロッシング・ザ・ブリッジ」や

「そして、私たちは愛に帰る」などで知られる
ファティ・アキン監督の新作。


ドイツ在住のトルコ系移民である彼は
民族や文化の混ざった
多様性やごった煮感を描くのがうまく

今回も
さまざまな人々が集まる
“ごった煮食堂”を舞台に

生き生きとした人物たちが
魅力を放つ作品でした。


言ってしまえば
単にツイてない男が
どうにかがんばるって話なんだけど

なんか魅力があるんですねえ。


へんに飾ったり
カッコつけたりしない人たちの
素のまんまの“強さ”には
かなわない、というのか

人間的な味がある、というんでしょうか。

「ギックリ腰」なんて古典的なギャグ(?)で
延々引っ張ったりする
ベタさも楽しく


料理シーンはさほど多くないのに
めちゃくちゃお腹が空きました。


おなじみ『週刊朝日』ツウの一見で
人気の料理研究家
コウケンテツさん
本作についてお話を伺いました。

監督とは同い年でもあり
また「自身のルーツ」的な探求の姿勢など
けっこう感覚が近いんだそう。

1/27発売号で掲載予定です。
お楽しみに☆


★1/22からシネマライズほか全国順次公開。

「ソウル・キッチン」公式サイト
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デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断

2011-01-20 18:52:32 | た行
「ハングオーバー!」より
おもしろかったな。

「デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断」71点★★★☆


建築家のピーター(ロバート・ダウニーJr.)は
アトランタでの仕事を終え
出産間近な妻の待つロスへ帰ろうと空港へ。

だがおかしな男
イーサン(ザック・ガリフィアナキス)に関わったせいで
なんと飛行機をおろされてしまう。


携帯も財布も持たずに放り出されたピーターに
イーサンが声をかけてくる。

「車でロスまで一緒に行こう」

げっ、マジで?こんなヤツと?
しかし妻の出産予定日は迫り、ほかに方法はない。
まあ、しかたないか……

ところが、これが運の尽き!
ピーターは無事家に帰れるのか――?!


身なりもキチンとしたビジネスマンが
トラブルメーカー男に振り回されながら
アメリカ横断をする、というコメディ。

マジメとアホ、ボケとツッコミ、
とことん噛み合わない男二人の珍道中という
シンプルだけど最強のシチュエーションがおもしろく
コメディとして完成度が高いと感じました。


「ハングオーバー!」を大ヒットさせた
監督&スタッフの新作なので

似たテイストではあるけど
今回は悪ふざけもほどほど。
しんみりさせるくだりすらあり(笑)。

「ハング~」より
見易かったです。


ただ
底抜けなアホアホパワーを求める人には
物足りないのかもしれませんなあ。


見てると
ボケ役ザック・ガリフィアナキス(覚えにくい名前…)のほうが
犬好きだし、いいヤツに見えてきて

まとも役なはずのロバート・ダウニーJr.が
ウザくてヘンなヤツに見えてくるのが
おかしかったんですが

それって私だけ?


★1/22から全国で公開。

「デュー・デート 出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断」公式サイト
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グリーン・ホーネット

2011-01-19 13:20:22 | か行
これも元ネタがあるんですねえ。
アメリカってのは
ヒーローを何人抱えてるのか。


「グリーン・ホーネット」57点★★☆


ブリット(セス・ローゲン)は
大新聞社の息子。

厳しい父親に育てられた彼は
すっかりヒネて
放蕩三昧の日々。

だが父親が急死し
ブリットは社長業を引き継ぐことに。

そして彼は父親の運転手だった
カトー(ジェイ・チョウ)に出会う。

メカに強く、腕っぷしも強い
天才カトーに感動したブリットは
カトーにこう持ちかける。

「俺たちで
世の悪を正すヒーローになろう!」


さてはて
凸凹コンビは活躍できるのか――?


1930年代にラジオドラマとして誕生し、
60年代にはテレビシリーズと
大人気の原作を

「僕らのミライへ逆回転」の
ミシェル・ゴンドリー監督が映画化した本作。
しかも3D。

元ネタはブルース・リーを
人気者にしたことでも知られてるそう。

ほへぇぇ~知りませんでした!

だから端々に
ブルース・リーネタが出てきたんだ。


ただ映画の出来としては
ちょっと予想はしてたんですが
悪いほうに当たってしまった。


ミシェル・ゴンドリー監督って
そもそも
ちょっとバクチ的なところがあるんですよねえ。


繊細すぎて理解しにくい
ビミョーな線の細さとか

素人くささとか
独特の空回り感が


科学作用を起こすと
ビッグバンになるのですが


今回は最先端の映像や
ザッツ・ハリウッド
エンタテイメント性など

器と監督の持ち味が
まったくかみ合ってない!(苦笑)


3Dである必要も全然なくて
メガネが邪魔だった…。


監督、フランス人なんで
ハリウッド招致による
こういうことってときどき起こるんですけどね。。。

持ち味を
融合させきれない事態。

リュック・ベッソンとかもときどき……。


ただ
カトーを演じたジェイ・チョウは
すごーくチャーミングでした。

レミオロメンのボーカルに似てる(笑)

美人秘書役の
キャメロン・ディアスも
しっかり役目果たしててキュートだし。


悪い意味でなく
監督を変えて
続編してみたらどうでしょうねえ。


★1/22から全国で公開。

「グリーン・ホーネット」公式サイト
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