ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ウッドストックがやってくる!

2011-01-17 12:00:34 | あ行
アカデミー賞受賞監督たちが
本当に撮りたかった映画、という
プロジェクトの第一弾、

アン・リー監督の

「ウッドストックがやってくる!」70点★★★


本当にあった出来事を
映画化したものです。


1969年の夏。

NY州の田舎町の
ユダヤ系移民の家庭に生まれた
青年エリオット(ディミトリ・マーティン)は
とてもいい子。

絵画の才能に恵まれるものの
地元でモーテルを経営する
両親に頼りにされ

商工会の会長もさせられるなど
田舎に束縛されていた。

そんなときエリオットは
近くの町で行われるはずだった
野外コンサート「ウッドストック・フェスティバル」が
地元民の反対でダメになったことを知る。

じゃあこの町に
ウッドストックを呼んじゃおう!

エリオットの無謀ともいえる
挑戦はいかに……!?


歴史的ムーブメントのなかで
成長する若者を描いた本作、

原作者エリオットと
偶然おなじテレビ番組に出た監督が
彼に本を手渡されたことが
企画の始まりだったそう。


気負うところなく
おおらかに撮ったような空気が気持ちよく


「イントゥ・ザ・ワイルド」(07年)の
撮影監督の手による
褪せたカラー写真のような映像が
すごく当時っぽくて
いい感じです。


見どころはやっぱり
膨大なエキストラによる
ウッドストック現場の再現ですね。


ヒッピーな人々が
わらわらと沸いてきて
ダラダラと(←ここがポイント!)と
会場に向かって歩くシーンなんて圧巻。


どこを切り取っても
ドキュメンタリーかというくらい
細部まで再現されてます。


見ながら
当時のものすごい若者たちのエネルギーと
ピースフルで幸せな時間を
体験できるのがいいですねえ。


当時、背景にあったのは
ベトナム戦争。

おなじように混迷し混沌としてる時代なのに
なんでいま
これができないんだろう、という
単純な疑問も浮かんだり。


あと
役者がさりげなく豪華です。


「ハリー・ポッター」の
あのいじわるオバチャン先生役
イメルダ・スタウントンが
主人公のヒステリックな母親役だったり


「ソルト」でもイイ味出してた
ゴツい男、リーヴ・シュレイバーが
オカマ役で登場したり、

「ミルク」の美青年
エミール・ハーシュが
ベトナム帰りの青年に扮していたりします。


ちなみに監督は
1954年台湾生まれで
78年に米国に移住。

ウッドストックを体験してはいないけど
中学時代に
たぶん海の向こうのムーブメントに
憧れていたんじゃないかなー。


★1/15からヒューマントラストシネマ渋谷で公開中。

「ウッドストックがやってくる!」公式サイト
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サビ男サビ女

2011-01-13 20:05:10 | さ行
ツイッターでもつぶやいたけど
キネ旬の2010年ベスト10、特に邦画
暗いよね。。。

「悪人」に「告白」に「ヘブンズストーリー」……

わかるけど
笑いたいよねえ映画で。

ということで
ショートショートのお笑いを
4本集めたこちらを。

「サビ男サビ女」68点★★★


そもそもはこれ
プロデューサー養成の目的で
制作されたものだそう。

桜庭ななみや友近など
旬の人材を
呉美保監督ら、新鋭監督4人が
20分ほどで料理する、という趣向です。


他人を応援するのが生き甲斐の
女子大生(桜庭ななみ)が
とんちんかんな
「ハゲマシガールズ」

独身クレーマー女(友近)が
リアルで怖い
「くれいむないと!」など

4作品がそれぞれ笑いを含んだ
ナンセンスギャグマンガ、という感じ。


長いとつらそうな笑いでも
20分くらいなら笑って終われる
ちょうどいい塩梅です。

ちょいとつまむ感じで
いいんじゃないでしょうか。

ただ「サビ男~」って総タイトルはちょっと
意味づけしすぎでイマイチ(苦笑)


4本のなかでは
CM出身、関口現監督が
小泉今日子主演で描く
「せびろやしき」が一番おもしろかったですね。

タイトルの意味を
ぜひ劇場で☆


そうそう
見たあと、昔、関口さんを
取材したことがあるのを思い出しましたよ。

CM作る人のお仕事紹介ってテーマで。
お元気そうで、ご活躍すばらしい!

★1/15からヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開。

「サビ男サビ女」公式サイト
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ヤコブへの手紙

2011-01-10 19:22:54 | や行
フィンランドっていうと
「かもめ食堂」思い浮かべちゃうのって
どうなんでしょうね。

「ヤコブへの手紙」50点★★


1970年代、フィンランドの田舎。

模範囚として出所することになった
中年女性レイラ。

刑務所を出ても行くところがないレイラは
老牧師ヤコブの計らいで
彼の家に住み込みで働くことになる。

彼女の仕事とは
盲目の牧師のために
信者からくる相談の手紙を読むことだった。

だが、あるとき
手紙が来なくなってしまい――?!


フィンランド国内でヒットし
第82回アカデミー賞
外国語部門代表選出をはじめ
国内外で数々の賞を受賞した作品。



北欧ののびのびとした風景
ゆっくりと流れる時間、

聖書の言葉が多く引用され、
バックに流れるは静かなショパン……

とても美しいのですが

寝落ちの条件が
これまた美しく揃ってしまい
申し訳ないほど
あっさり撃沈してしまいました。
(5分ほどですが・・・)


で、もう一度見たのですが
う~んどうだろう

そんなに心動かされる
ポイントがなかったんですよねえ。

話もだいたい
想像が出来るというか。


出てくるのは
牧師とレイラ、郵便配達の3人のみで
まあそれはいいんですが

レイラと郵便配達とのやりとりなど
要所要所で
ちょっと不鮮明なところがある。

こちらに答えを投げかける
という感じでもないしなあ。

なにより
主人公のレイラが
あまりに終始ふてぶてしく無愛想なのが
ダメだったのかも。


彼女犯した罪も
あらかた予測がついてしまったし。

ただ
レイラを演じる
カーリーナ・ハザード(1966年生まれ)は
女優のほかジャーナリスト
作家、教師、翻訳家、メディア研究家としても
活躍してるんだそうで

ちょっとスゴイですね。


また
タイトルからして
宗教的な背景があるので
それを知ると
もっと深く読み込めるのかもしれません。

昨日、Penの
「キリスト教特集」第2弾を購入したから
読んでみるか……。


★1/15から銀座テアトルシネマほか全国順次公開。

「ヤコブへの手紙」公式サイト
コメント (2)
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わが心の歌舞伎座

2011-01-09 18:44:04 | わ行
海老蔵騒動があったと思ったら
出演されてる中村富十郎さんの訃報が。

いろんな意味で
より重要かつタイムリーな映画になりました。


「わが心の歌舞伎座」76点★★★★


歌舞伎座の建て替えを前にした
「さよなら公演」の舞台と
その舞台裏を追った
2時間47分のドキュメンタリ-。


市川團十郎、尾上菊五郎、
片岡仁左衛門、中村勘三郎、松本幸四郎(敬称略)など

11人のスター役者
歌舞伎座の想い出と
自身のベスト舞台を語り、

その合間に
舞台裏や稽古風景などが挟まれる、という趣向です。


歌舞伎鑑賞は3度ほどしかない身、
正直、寝るかと思いましたが

意外や全部見ましたぞ。


柱の一本から古びた階段まで
慈しむように撮られた
美しい映像といい

“歌舞伎座”を主人公にしている、というのが
すごく伝わってくるし

なにより一流役者たちの輝きには
目を離させない強烈な磁力がある。

一言一言に
重みがあるんですよねー。


「歌舞伎とは日本の風土や気候から出た
汗やアクのようなもの」という中村吉右衛門。

「伝統を継ぐためにはコピーでなく
自分たちなりの何かを
少しずつ足していくのだ」という團十郎。


さらに思わぬ場所で
稽古をしていたとか(これはびっくり!)

舞台の絵図が公演ごとに
新しく描き変えられているなど
(しかも意外な場所で!)

「へえ」な裏話も満載。


貴重な記録でありつつ
歌舞伎って何なのか、ということが
素人にもとてもわかりやすく伝わってきます。


ファンのための新春公演というだけでなく

歌舞伎をあまり知らないヒトにも
ちゃんと楽しめる映画なんで
おすすめです。


しかし番長、子供のころから
柔和でメガネの
片岡仁左衛門が好みなんだよなア。


★1/15から東劇ほか全国で公開。

「わが心の歌舞伎座」公式サイト

そして
今年もおなじみ
「週刊朝日」ツウの一見で

東大教授で歌舞伎研究家の
古井戸秀夫さんにお話を伺いまして

よりいっそう
この映画の貴重さとおもしろさが
わかった次第です。

掲載は1/18発売(のはず)。
ぜひご覧くだされ。
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しあわせの雨傘

2011-01-08 16:09:20 | さ行
最近、カトリーヌ・ドヌーヴ
活き活きとしてますねえ。
セサミンでも飲んでるのか?


「しあわせの雨傘」57点★★☆


1970年代。

スザンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)は
お金持ちのブルジョワ主婦。

優雅だが退屈な毎日を過ごし
娘にも「飾り壺」なんていわれてしまう。

そんななか夫の経営する雨傘工場で
ストライキが勃発。


夫に代わって労働組合と
交渉することになったスザンヌは……?!


フランソワ・オゾン監督、
「Ricky リッキー」とは打って変わって
軽~く遊んだという印象。


話としては
普通の昼ドラふうで
さほど特徴もないけれど

元ネタも軽い笑いを楽しむ
コメディ舞台劇だそうで
なんか納得でした。


ただ1970年代の雰囲気や
グッドセンスな衣装などはさすが。


雨傘つながりにしたところといい
カトリーヌ・ドヌーヴ主演
「シェルブールの雨傘」(1964年公開)への
オマージュがあったり

ドヌーヴと
さらにジェラール・ドパルデューまでを
自在に操作して楽しんだ、ということでしょう。

最近、ほぼ年に1作ペースで
着々と制作してるオゾン監督。
(「Le Refuge」(2010年)という日本未公開作もある)

たまにはこういう息抜きも
いいんじゃないんでしょうか。

まあ番長は「Ricky」のほうが
俄然好きですけどね~。


そうそう
ドヌーヴ「徹子の部屋」に出たんですね。
見逃しましたが
「大福」好きなんですって?
いいですねえ~福福してて。


★1/8からTOHOシネマズシャンテほかで公開中。

「しあわせの雨傘」公式サイト
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