いま、まさに見たかった映画だ!
「ディーパンの闘い」80点★★★★
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内戦が続くスリランカ。
政府に対抗する<タミル・イーラム解放の虎>の兵士だった
ディーパン(アントニーターサン・ジェスターサン)は
海外に亡命するため
女性ヤリニ(カレアスワリ・スリニバサン)と
母親を亡くした少女(カラウタヤニ・ヴィバシタンビ)と
偽装家族を装って出国する。
着いた先はフランス。
だがそこで彼らは
新たな“闘い”に直面する――。
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「預言者」(09年)
「君と歩く世界」(12年)の
ジャック・オディアール監督。
フランスの難民や若者の問題という社会状況と
そこにいる人物の内面描写が
しっかり噛み合って
「いま、まさに見たかった映画」
と言えると思います。
「サウル息子」もいいけど
ワシは奥行きの深さでこっちを支持するなあ。
09年まで26年間も続いたスリランカ内戦。
そこから脱出した主人公たちはフランスに辿りつく。
なんとか難民審査を通り抜けた3人は
パリ郊外の団地に
住み込みの管理人として職を得るんですが
しかーし、さびれたその場所は
ドラックの密売人や若者たちがたむろする
不良の溜まり場だった――という展開。
うわあ、ありそうだ。
舞台は戦場ではなくフランスなのに
しかし、そこでまた新たな“闘い”が始まるわけです。あーあ。
でも、映画のほとんどはドンパチもなく
ディーパンたちの日々の暮らしと関係性に重点がおかれていて
そこがいい。
彼らの最初の“闘い”とは
異国での日常に馴染むための闘いであり、
うそっこ家族をどう持たせていくか、という闘いなんですね。
そのなかで
妻の若さゆえのわがままさとうか
ディーパンにも、少女にも、暮らしにも馴染もうとしない、
やっかいさの描写が見事。
そこでディーパンがみせる“父性”に
「おっ」となります。
で、他人どおしの3人が
だんだん本当の家族のようになっていく過程が優しい。
なのですが
やっぱりそう簡単にはいかないんですよ。
終盤、<解放の虎>の兵士だったディーパンが
まさしく孤高のトラのように牙をむくシーンは必見。
その戦闘力の高さと、必然性に圧倒されます。
ディーパン役のアントニーターサン・ジェスターサンは
実際にスリランカ内戦の元兵士だったそうで
「どうりで・・・」という説得力。
監督もよくこういう人を見つけてくるよなあ。
絶望だけじゃない、光があるところにも
救われました。
★2/12(金)から全国で公開。
「ディーパンの闘い」公式サイト