本年度アカデミー賞脚本賞ノミネート。
「魂のゆくえ」68点★★★☆
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ニューヨークにある小さな教会で
牧師を務めるトラー(イーサン・ホーク)。
信者に真摯に対応するトラーだが
実際、小さな教会は存続が難しく、
この教会も母体である大規模な教会団体と、
大口寄付をしてくれる企業ありきで成り立っていた。
そんなあるとき、トラーは礼拝にきていた
若く美しい女性メアリー(アマンダ・セイフライド)から
相談を持ちかけられる。
環境活動家の夫が、現状を憂い、
ふさぎこんでいるというのだ。
トラーは彼女の夫に会い、
相談にのってやるのだが――。
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「タクシードライバー」(76年)の脚本家として知られる
ポール・シュレイダー監督作品。
描かれるのは大きく「神の沈黙」であり
現代アメリカにおける、宗教の現状。
監督自身が、禁欲的な信者の両親のもとで育ったそうで
このテーマを50年近くも温めてきたんだって。
クラシカルなタイトルバックをはじめ
映像を構成する美術も茶や白、黒でミニマルに計算されつくしていて
内容も含めて
壁に品よくおさまり、しかし非常に印象的な絵画のような
「高潔」の美学を感じました。
初っぱな。主人公の牧師トラー(イーサン・ホーク)が
「1年間限定で」日記を書き始めるというところから始まり
どうやら、彼が病にかかり、
人生の終結を決断しているらしい、っていうのがわかる。
それにはさまざまな理由があった。
まず、彼の過去。
彼の家は代々「従軍牧師」であり、自分もそうだったし
息子も「従軍牧師」になった。
だが、そのことで悲劇が起こるんですね。
次に、相談を受けていた美人信者の夫で、
環境活動家である人物が
「変わらない世界」を憂えて自殺する。
さらに彼は自分の教会が
まさにその「環境破壊を引き起こしているブラック企業」の寄付に頼らなければ
存続できない、という現実にぶちあたる――。
「神はなぜ、苦しめる?」の問いのなか、
さまよう主人公の様子は
答えのない問いにハマるしんどさ、虚無さをよく表している。
イーサン・ホークも、なにか一歩抜けた!という感じの演技。
なのですが
やはり宗教内容なので、ちょっと取っつきにくいことと
さらに
最後、たまさか、のように起こる救いが
すごーくシンプルで、根源的で
「結局、それかい!」と拍子抜けだった・・・・・・かな。
まあ、たしかに
「愛がすべて」ですけどね。
そうそう、プレス資料によると監督は
「イーダ」(14年)の監督と食事したときに
「この映画を作らねば!」と思ったそうです。
「イーダ」、いい映画だったもんね~
★4/12(金)からヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国で公開。