ソロツーリストの旅ログ

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振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

オルフェ―ヴルが負けた日

2012年10月08日 | 日記・エッセイ・コラム

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どうしても書かずに先へ進めないから

今日は唐突だけど、ウマの話を書く。

フランスG1レース凱旋門賞。

日本のオルフェーヴルが勝利を目指して走った。

結果は惜しい2着だった。

レース後はいろいろな感情が次から次へと湧いてとても寝られなかった。

日本中の競馬ファンはきっとみんな同じだったと思う。

            〇

ブログでは触れたこともないけど、ボクは競馬が好きだ。

競馬は賭博であるから営利目的の企業が入り込んだりしない、純粋な勝負の世界だ。

生半可な気持ちのヤツは一人もいないから、そこにはドラマが生まれる。

現在、中央競馬でクラシック3冠を達成したウマはわずか7頭。

オルフェ―ヴルはそのうちの1頭だ。

日本調教馬の悲願であるフランス凱旋門賞の栄光は、

同じく3冠の最強馬ディープインパクトでも届かなかったのだ。

けれど、オルフェーヴルは昨夜のレースで

その栄光をほとんどその手中に収めていた。

にもかかわらず次の瞬間、本当にするりとその手を滑り落ちていったのだ。

その瞬間の気持ちをどう処理していいのか、

今日一日かかってしまった。

            〇

中継映像は最初、ごみごみと混雑したパドックの中で

アヴェンティーノと連なって歩くオルフェ―ヴルが、

宝塚記念の時のパドックでそうであったように落ち着き払って

堂々とゆったりと周回を続けている姿を捉えていた。

でもやっぱり見ている方としてはちょっと心配で、

もっとうるさくしてもいいんだよ、といらぬことを考えてしまう。

本馬場へ入場しても日本のようにすぐ返し馬を見せることもなく

しばらく泰然と列を作って歩く。

ようやく列が解かれるとオルフェ―ヴルは頭を下げてゆったりと走り始めた。

「大丈夫だ、毛ヅヤもすごくいい、問題ない」

そう何度も自分に云い聞かせても、手のひらに汗が浮かび、座っていられない。

レースはあっけなく始まった。

大外枠からの不利な展開。

スミヨンは難なく折合いをつけて馬群の後方に位置を取る。

大きなアップダウンを越えて、フォルスストレートを抜けると残り533メートル。

スミヨンのゴー!の合図でオルフェ―ヴルは馬体を沈めて一気に加速した。

他のどの馬より低く柔らかく大きな完歩であっさりと先頭に立った。

完璧だった。

しかし、残り300を過ぎた時オルフェ―ヴルはあり得ないほど斜行する。

スミヨンは咄嗟に左手のスティックを右に持ちかえ必死に堪えようとするが止まらない。

結局、大外から内埒まで進路を変えた。

その時残り200メートル。

後方のソレミアとの差は1馬身半。

それでもその差を保ったままオルフェ―ヴルは渾身の走りでゴールを目指す。

日本でテレビを見ているファンは全員がこの時彼の勝利を確信した!はずだ。

追いすがるソレミアは、鞍上の名手ペリエのスティックに応えてその足を止めない。

ゴール板手前あと5メートル。

いや、大袈裟ではない。

あと5メートルだった。

            〇

明け方までの雨で、ターフは最悪の重さだった。

トップハンデの59.5。

大外枠。

完璧ではなかったがしっかり折合っていたし

スミヨンの追い出しも適確だった。

ゴール直前で運悪く足を取られた。

でも、ソレミアのほうが今日は速かった。

レースとはそういうものだ。

            〇

スグには寝られずに、録画したビデオを何度もみながらため息をついていた。

しかし、何度か見ているうちに、はっと気付いた。

こんなに必死になって走るオルフェ―ヴルを初めて見た気がした。

しかも、全力で走って、負けたのだ。

トップに立ちながら斜行してなお全力で走るオルフェ―ヴル。

・・・いつもボクは考える。

ウマはなぜ走るのか。

もちろんボクは知っている。

ウマはひとのために走るのだ。

3冠を獲り、グランプリも勝った馬が逸走したり、1番人気で凡走したり、

オルフェーヴルは人騒がせな馬だけど、

ボクたちのために文字どおり全力で走ったのだ。

それはまるで競馬を巡るすべての人々の愛に応えてくれているようだった。

競馬というと、賭博であることや、動物虐待とか、

穿った見方されることが多いけど、

オルフェ―ヴルの走りには一点の曇りもない。

文化と呼ぶにふさわしい世界観がそこにはあると思う。

            〇

後日談がある。

オルフェーヴルは池添謙一騎手のお手馬だ。

デビュー戦から全14レースに騎乗している。

けれど、フランス遠征ではベルギーのスミヨン騎手に乗り替わってしまった。

最善の選択をしたと云われて外された池添ジョッキーはさぞ悔しかっただろう。

口では「勝ってほしい、応援している」と云うけれど、

誰の目から見ても池添君の心中穏やかならぬことなどわかるというものだ。

そして、きのうの今日、京都競馬場のメインレース「京都大賞典」

池添騎手は大外枠メイショウカンパクの鞍上。しかも今日がテン乗り。

5番人気ながらオッズ18.4倍という微妙な期待。

4角まで馬群の最後方で足をためるとそこから一気にまくり上げた。

フミノイマージン、オウケンブルースリのベテラン古馬が馬体を合わせて並ぶ。

先頭の2番人気のギュスターヴクライを捉えると、

そのままの勢いでメイショウカンパクは1着でゴール板を駆け抜けた。

馬連でさえ175.5倍の万馬券。

「いいウマ乗してもらってます」とは池添騎手の勝利インタビューの言葉。

池添君の意地の1勝を見た、とは云わないが、

競馬にはこういうドラマが溢れているのだ。

Olfe


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