ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

北海道と名付けられ150余年、けれどその遥か昔からそこに在ったと自然はボクに迫ってくる 北海道のこと その3

2024年06月10日 | SR400 RH16J(2019)シータ


羊蹄山(蝦夷富士)

元は後方羊蹄山と書いてシリベシヤマと呼ばれていた

あの美しい山容を眺めながら

「で?どこが羊の蹄?」

「前方の羊蹄山はどれ?」

とアタマを傾けたり写真をひっくり返したりして

心当たりを得ようとするが実際見当もつかないだろう

それは全くのお門違いだからだ

今とは正確な地域は異なっているのかもしれないが

元は日本書紀に記述のある「後方羊蹄」の地名に由来している

田畑の畔によく見るギシギシのむかしの云い方が「シ(之)」というそうだが

そのギシギシの漢名(漢方薬名)を「羊蹄」と表すことから

「後方=シリベ」「羊蹄=シ」と宛てた

シリベシの地にある山ということから

「後方羊蹄山」と書いて「シリベシヤマ」と読んだ

(因みに現在シリベシは「後志」と表記される)

その後昭和の中ごろに地元の人たちからの要望があって

すでに云い慣らされていた訓読みの羊蹄山(ようていざん)へとすっきり名前を変えた



手前に少し低いが同じく美しい山容の「尻別岳」がある

アイヌの人たちは尻別岳を雄岳、後方羊蹄山を雌岳と対にして信仰していた

雌岳の方が高くて立派だな、ということに違和感をもった人は

武家社会の慣習がしみついた人だ

元来自然信仰の日本では命を生み出す女性の方が遥かに畏敬される

日本の神様の最高峰は天照大神

女性の神様だ

アイヌの人たちも同じような思考の民族だったのだろう



美笛峠を下り国道276号線を喜茂別へ進むと

正面に不意に羊蹄山が現れてハッとする

そしてその視界の左に尻別岳

富士山に代表される美しい三角形の火山を以前はコニーデ型と云ったが

日本にはこの種の火山が多いことから同じコニーデ型の火山を

「〇〇富士」と呼んで地元に親しまれてきた

この羊蹄山も「蝦夷富士」と呼ばれている

北海道にはその他にも利尻富士がある



東北の岩木山(津軽富士)

関東の榛名山(榛名富士)

山陰の大山(伯耆富士)

四国の飯野山(讃岐富士)

そして九州の開聞岳(薩摩富士)

日本各地でどれもみな素晴らしい郷土富士を実際に見てきたけれど

羊蹄山の美しさは群を抜いている、とボクは感じる



ニセコへ向かいながらどんどん近づく羊蹄山にますます心が躍る

この日は山に一片の雲もかからず感謝したくなるようなコンディション

北海道初日だったけどもうこれが見られれば今回の北海道ツーリングは

大成功だったなと感じる程だった

言葉にするととても陳腐なんだけど

何度も羊蹄山に向かって

「あーりーがーとーうー!」

と叫んだのだよ

この天邪鬼のひねくれ者がね

自分でもびっくりするくらいね



まぁいいさ



雪が積もった美幌峠を寒さと恐怖の中恐る恐る越え

弟子屈の神ドラッグ「ツルハ」で「桐灰カイロ マグマ」を買った

(この時期北海道といえどもコンビニにはカイロはないらしい)

ツルハ「神」ドラッグストアさまには棚2枚にかろうじてカイロが残る

しかも桐灰のマグマ

店内ですぐに高温注意のマグマを7枚貼った



因みに屈斜路湖川湯のこの日の9時の気温は5.3℃

風は北北西から4.9m(湖畔は倍くらいだったけどね)

自販機にはすでにホットの設定が無いところが多く

持って行ったポットに熱いコーヒーを調達しながら走っていた

けれどさすがに「マグマ」

その後はポカポカとは云わないが寒さは感じることが無くなった



開陽台を出てすぐに一時的に雨に降られる

止む気配が無いのでカッパ装着

さすがにフリースインナーにマグマ7枚張り、ウルトラライトダウンベスト

ナイロンジャケットからのカッパ

これは暖かかった



野付半島の付け根から道道950号線へ入るころには

雨もすっかり上がって日も差していたが

風が強くまだ寒そうだったのでカッパのまま走った

野付半島は根室海峡から続く野付水道に頼りなく突き出した砂嘴で

厳密にいえば半島ではない

砂が堆積してできた洲が長く連なっている

ほぼ真っ平で砂嘴が狭い場所では視界の左右に海が見えるほど細い

この現実離れした景色こそここ野付半島の魅力だ

砂嘴の付け根から道道950号線が先端の野付灯台まで伸びる

その長さおよそ18km

右手の野付湾にはいくつも短い砂嘴が伸びて

時折大きなミズナラの林も見られる



しかしそのほとんどは海水によって浸食され立ち枯れ

荒涼とした風景を見せる

以前は枯れ朽ちたトドマツの根が水辺に散見されたようだが

道路から見る限りではそれらはもうほとんどが朽ち果て消えてしまっている




道は先端でどん詰まりなのでそのまま国道へ引き返す

根室水道の向こうには国後島の山並みがはっきり見える

その左手は知床半島

まだ雪をかぶる羅臼岳が良く見えた

オートバイを停めて草むらにカッパのまま座って眺めるが

ふと気づくと多くのシカがすぐそばで草を食んでいた

中に立派なツノを持つ雄もいる



シカの群れ、漁に使うカラフルな浮子、そして国後と知床

羊蹄山の景色に劣らぬ忘れられない情景だった



今回のツーリングを計画するとき

羊蹄山とニセコ連山を巡る道道66号線

そして巨大な砂嘴に伸びる道道950線がとにかく目的だった

この2箇所は西と東に直線距離で400km離れていて

いくら日程が5日あるとはいえかなり行程に制限が出てしまった

けれどどちらも天候には恵まれ(気温は内地で云えば冬並みだったが)

良いも悪いも成功も失敗もないのだろうが

満足度はかなり高いものとなった



そこでまた例の問いだが

だから北海道を走ることがボクにとって特別なのか

いや、やはりこれも違う気がする

羊蹄山もニセコも

野付半島も

特別ではない

実はこう書き進めるうちに自分の中で答えのようなモノが見えてきた

次回はその辺りについて書いてみたい



と云うことでもう少しお付き合いいただきます、北海道

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