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上村達男著「NHKはなぜ、反知性主義に乗っ取られたのか」

2016年01月18日 | 読書三昧

常々、世の中にはすごい人がいるものだ、と感心しきりなのだが、この本の著者、前NHK経営委員会副委員長の上村氏も、まさにその人だ。

 

通読して思うのは、執筆の動機は、自ら経営委員会の副委員長として、あの「祖にして野で卑なる」籾井会長の誕生を許してしまった悔しさから、現在のNHK、ひいてはアベ政権の持つ根深い反知性主義に対して、心から告発せずにはいられなかったということだろう。

2014年12月14日の「会長任命に関する指名部会」開催の前日には、早くも読売新聞夕刊に「NHK新会長は籾井勝人氏が有力」とのスクープ記事が出て、同氏の会長就任が既定のことのようになってしまったという。

この事実ひとつとっても、籾井氏の会長就任が政権側の強い意思を滲ませるものであったが、著者をして、大手商社の専務や米国子会社の社長まで務めた(籾井氏という)人となりが、「あれほどひどいとは思いもしなかった」と述懐させることになる。

これは、首相のお友達閣僚の任命に留まらず、日本銀行総裁、内閣法制局長官、NHK経営委員等々の恣意的人事と軸を一にするものであり、現政権の反知性主義の集大成である。

蛇足:本書では、英国BBCのガヴァナンスについても紹介されている。それは、BBCトラスト(経営監視・監督機関)と執行委員会の二層構造になっていて、受信料を支払う視聴者の受任機関としてのトラスト(12名)は公募制で、主官庁の「公職任命チーム」により選考され、大臣の助言のもと女王によって任命される。このため、公共放送としてのBBCの自主、独立が厳しく担保されるという。

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