お茶の師匠から、真之行台子、大円真、正引次の許状を頂きました。いわゆる上級のお点前もこれが最後の段階になります。
久しぶりに紋付の着物を着て、利休像の掛け軸が床の間に飾られるお茶室で、師匠から真之行台子の指導を受けました。
もともと、お茶名をとるつもりで始めたわけではない茶道なので、奥伝に進むようお話を頂いたときも、このまま楽しく稽古を続けるためにも遠慮したいと申し出た経緯があります。
許状を頂くことは、一定のレベルに到達したという証明ではなく、これから新しいことを学んでもよいという趣旨だから、気負わずその気持ちで臨んでみてはと師匠に言っていただいて、奥伝の稽古に進み今日に至っています。
頂いた許状を大切に風呂敷に包み、師匠のお宅を後にすると、あいにく細かい雨が降り始めたので、風呂敷包みを懐中深くしまって我が家まで辿り着きました。同じ師匠から、昨年お茶名を頂いた妻に許状を披露すると、いつか夫婦そろってお茶名披露のお茶会が催せるといいわねと言ってくれました。
そして、さっきまで降られていたこの時期の雨を「菜種梅雨」とも言うことに気がつきました。
紋付の正装に降る憂鬱なはずの雨も、この美しい日本語で呼んでみると、雲間から黄色い光が差すような温かみを感じます。花を咲かせる雨「催花雨(さいかう)」が同じ音の「菜花雨」に転じ、「菜種梅雨」と呼ばれるようになったという説もあるそうで、いずれにせよ、この時期の雨は開花をうながす温かい雨です。
頂いた許状が、これから新しいことを学んでよいという、趣旨であることを思い返すと、小学校の一年生が真新しいランドセルに黄色いカバーを付けている姿さえ思い浮かんで可笑しくなりました。
「高齢者」と呼ばれるまであと少しという歳になって、こんな気持ちになれるのも、また得難い経験なのだと思います。