「反組織、反権力」
旅の間に今回は3冊の本が読めた。
佐々木譲「廃墟に乞う」、池井戸潤「下町ロケット」の直木賞受賞作2篇と、池井戸の直木賞受賞後の作品「ようこそ我が家へ」である。
佐々木譲の作品は刑事物のジャンルで、休職中の刑事が、色々頼まれ事件に首を突っ込んで、解決をするという設定になっている。推理と聞き込みだけでこんなふうに解決すればありがたいのだが、謎解きの面白さというより、人間関係の彪を描いたものとして、なかなかである。
池井戸は今や国民作家ともいうべき「半沢直樹」の作家であるが、最近では中国、台湾でも人気が出ているときく。「おしん」もアジアでは人気が出たそうだが、やはりなにか共通するものがあるのだろうか。あるとすれば、弱いものが強いもの(権力、組織など)に立ち向かい、やっつけるという、水戸黄門にもあるパターンだろうか。
「下町ロケット」は中小企業が大企業相手に己の持てる技術力で立ち向かうという胸のすくパターン、「ようこそ我が家へ」は典型的小市民の主人公に振りかかる、仕事上と、家庭での事件に、地道に立ち向かう物語である。前者の登場人物は類型的に半沢直樹の登場人物とパターンはよく似ているが、「我が家へ」は少し違う。しかしながらこの作家は会社組織を描かせたら抜群の腕である。しかも基本的には人間の善意、前向きなスピリットを信じているのが嬉しい。大企業だけでなく、中小企業、銀行などの描写ははお手のものであろう。
これらの作品は、私のブログを見た友人がそろそろ刈谷では読む本がなくなってきたなと気を使って新たに届けてくれたもので、旅の間中退屈どころか、ワクワクしながら時間が持てた。まだ当分楽しめそうである。ありがたい。