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ミステリー大賞だけのことは

2014-02-19 14:57:10 | 


海堂尊「チーム・バチスタの栄光」宝島社 2006年刊

面白かった。先日「孤高のメス」という医事小説を読んだばかりだが、こちらは少し真正面から取り組み過ぎで、エンターテイメントとしては物足りなさを感じていた。
同じような医事小説だが、定かではない大学病院の医療ミスの有無をめぐり、専門外の医師と厚労省の官僚(これも医師だが)がこの難問に取り組むという設定。

大学病院の派閥抗争や、診療各科、看護師などとの微妙な争いも描かれる。主人公はちょっとぐうたらな、何事にも斜に構える人間で、そこら辺りをユーモラスに描き出すところが、前掲書とは大きく違う所だ。
医学専門用語も最低限に抑えてあるので読みやすい。ちなみにバチスタというのは、特殊な手術方式を編み出した心臓外科博士の名前で、その術式を多く手がける医学チームを結成した、ちょっとワケありの大学助教授(アメリカ帰りの気鋭の外科医)が中心のチームをバチスタチームと呼ぶ。

その優秀なチームが連続3件の手術中の死亡を引き起こす。手がけた全体の事例から言えば、それでも成功率8割なので、率から言えば咎められることはないが、なにかおかしいのではないだろうか、と問うのが調査のきっかけである。
衆人環視の中での手術中の事故(或いは故意)、しかもその関係データは刻々と取られ記録されている。そんな中でミスではなく意図的な殺意が実行できるのか。

医療の閉鎖的な社会に閉じ込められた中での事件、やはり患者からの視点は少しなおざりにされているが(この作者も医者である)この点を割り引けば、十分に面白いエンターテイメントである。