
最近読んだ本で面白かった2冊を紹介します。
原田マハ「旅屋 おかえり」集英社刊2012年
文句なく面白い。傑作といってもいい。TVの旅番組を打ち切られた主人公が、他人の代わりに旅をするという仕事を開拓し引き受けるという奇想天外なドラマだが、主人公と旅先での出会いを情感豊かに描き上げる著者の筆力と構成力はなかなかである。以前もマハの作品を読んだ記憶があるが(作品名も忘れてしまったが)、これに似た感激をしたことだけが印象に残ってる。この人は愛される作家だろう。
沼田まほかる「ユリゴコロ」双葉文庫2011年刊
2012年本屋大賞ノミネート作品、大藪春彦賞受賞。一捻りもふたひねりもしてある作品だが、著者の筆力、特に心理描写の繊細さが読者を引きつける。実家から見つかった4冊のノートに記された、数人の人を殺めた告白文から始まり、小説ならではの複雑な人間関係が絡んで展開するストーリー。少しボケ始めた私には複雑すぎるような気もするが、結末の大逆転は若干そんな予感がしていた。確かに大藪賞らしく、ドライなタッチも感ぜられるが、エンタテイメントとしては秀逸である。