三吉眞一郎「翳りの城」竹書房 2013年刊
いかにも作家が作った物語といういうところが少なくない内容である。
元亀三年(1572年)武田信玄が駿河経由で上洛を開始した際、有力武将が名も知られてない異形の城を攻めるという物語。
武田方2000の軍勢、しかも城攻めでは未だ失敗をしたことのない勇猛な武将が、行き掛けの駄賃的な軽い気持ちで攻めかかったが、そうは行かず死斗となる。双方相打ちだが、2000の軍勢が壊滅したので、信玄は殿軍を失い、上洛不能となる。
この城の生い立ちやら、守備兵達の怨念、城の構造、合戦の様子、攻撃方、守備方の内情など一応道具立ては揃っている。しかし優等生の作文のように、なにか真実味を感ぜられないのは私だけであろうか。
ただ神に対するキリスト教徒、と仏教、神道(言ってみれば西洋と日本)の考え方の違いは、よくかけていると思う。
オーソドックスな小説の技法を駆使した作品だと感じた。